「関西でも、英語漬けの環境で学べる私立中高一貫校が増えたらいいのに」――そう感じてこられたご家庭は、決して少なくないのではないでしょうか。首都圏の学校情報はネットにあふれているのに、関西となると選択肢が急に見えづらくなる。海外赴任から戻ってきたお子さまの受け皿を探して、途方に暮れた経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
そんななか、大阪市北区の金蘭会中学校・高等学校が、2028年4月に「広尾学園大阪中学校・高等学校」へと校名を変更し、共学化する予定であることが公式に発表されました。東京で急速に人気を集めた広尾学園の名前が、3校目として関西にやってくる。この動きは、関西の学校選びを考えるご家庭にとって、決して他人事ではありません。
この記事では、発表されている事実と、まだ決まっていないことをきちんと切り分けたうえで、保護者の皆さまが今の時点で何を考えておけばよいのかを整理してお伝えします。お子さまが現在小学校の中学年〜高学年というご家庭にとっては、まさに進路選択のど真ん中に関わる話なんです。
ニュースの概要
発表主体は、大阪市北区で金蘭会中学校・高等学校を運営する学校法人金蘭会学園です。同学園は公式サイト内に「広尾学園大阪」の特設ページを開設し、2028年4月に校名を「広尾学園大阪中学校・高等学校」へ変更し、あわせて共学化する予定であることを公表しました。公式ページの表記は「2028年4月予定」「2028年4月施行予定」で、現時点では公式発表済みの計画という段階です。東京の広尾学園中学校・高等学校を運営する学校法人順心広尾学園も、自校サイトでこの取り組みを告知しています。
ここで大切なのは、これが法人の合併や吸収ではないという点です。設置者は引き続き学校法人金蘭会学園であり、東京の順心広尾学園とは「教育連携」という関係になります。よく似た名前になるので混同されがちですが、経営が一体化するわけではないんですね。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 新しい校名 | 広尾学園大阪中学校・高等学校 |
| 現在の校名 | 金蘭会中学校・高等学校(1905年創立) |
| 所在地 | 大阪市北区大淀南3丁目3番7号 |
| 設置者 | 学校法人金蘭会学園(変更なし) |
| 東京の広尾学園との関係 | 教育連携(法人合併ではない) |
| 校名変更・共学化 | 2028年4月(予定) |
| 高校募集 | 引き続き実施と公式サイトに記載 |
| コース構成・募集要項 | 未発表(決定次第公開と告知) |
また京都新聞デジタルは2026年8月24日、広尾学園大阪の準備を担当する広尾学園副校長の金子暁氏へのインタビューを掲載しています。そのなかでは、将来的に中高合わせて1,200人規模を目指すこと、現在60人規模の中学募集を段階的に増やす構想、2028年入試で東京会場での実施を検討していること、帰国生の受け皿を意識していることなどが語られたと報じられています。ただしこれらは取材で語られた構想・見通しであり、確定した募集要項ではありません。
ここは押さえておきたいポイント:現時点で公式発表されているのは、2028年4月に校名変更と共学化を行う予定であることと、高校募集を継続するという方針までです。既存の金蘭会中学校・高等学校が新体制へ移行する計画であり、新しい学校が新設されるという発表ではない点にもご注意ください。コース名、定員、学費、入試科目はいずれも未発表です。学校説明会や広告で見かける情報も、公式発表かどうかを必ず確かめてください。
背景と解説
東京の広尾学園がたどってきた道
そもそも東京の広尾学園は、もともと順心女子学園という女子校でした。2007年度に共学化と校名変更を行い、そこから医進・サイエンスコースやインターナショナルコースを整備して、進学実績を大きく伸ばしてきた学校です。2021年には、村田女子高等学校を母体とする広尾学園小石川中学校・高等学校が誕生しています。大阪は、この流れに続く3校目という位置づけです。
「東京の広尾学園より、もっと速く」という言い方が報道で使われているのは、東京での改革で積み上げた教育設計や広報、入試運営のノウハウを、大阪では最初から使えるという意味合いです。とはいえ、進学実績は生徒が入学して6年後に初めて見えてくるもの。新体制がスタートする前の段階で結果が約束されているわけではない、という冷静な視点は持っておきたいところです。
広尾学園の国際教育は「IB」ではありません
ここは、国際教育に関心のある保護者ほど誤解しやすいポイントなので、はっきりお伝えしておきます。東京の広尾学園中学校・高等学校、広尾学園小石川中学校・高等学校は、いずれも国際バカロレア(IB)の認定校ではありません。文部科学省IB教育推進コンソーシアムが公表する2026年6月30日時点の認定校・候補校一覧にも、両校の名前はありません。
広尾学園のインターナショナルコースは、IBとは別の独自モデルです。中学では、帰国生など入学時点で高い英語力を持つ生徒向けのAG(アドバンストグループ)と、基礎から英語力を伸ばすSG(スタンダードグループ)に分かれます。AGは授業を原則英語で行い、国語や社会の一部、実技科目などは日本語。高校のインターナショナルコースは基本的に英語で授業を行い、SATやTOEFLの対策、高校2年からのAP科目なども用意されています。つまり、英語で教科を学び、海外大学進学も視野に入れる仕組みを、IBとは違う形で組み立てているということです。
どちらが優れているという話ではありません。IBのうちDP(ディプロマプログラム)は、TOK(知の理論)、課題論文(EE)、CASを必修のコアとし、要件を満たすとIBディプロマを取得できます。TOKや課題論文はDP固有の要素で、PYPやMYPは異なる年齢層を対象とした別のプログラムです。一方の広尾学園型は、日本の一条校のカリキュラムを土台にしながら英語運用力と進学指導を強化する設計です。お子さまの英語力、性格、目指す進路によって、向き不向きは変わってきます。なお、これはあくまで東京校の仕組みです。大阪でどの方式やコース編成を採るかは未発表です。
用語のかんたん解説:一条校とは、学校教育法第1条に定められた正規の学校のことです。つまり、卒業すれば日本の中学校・高等学校の卒業資格が得られる学校ということ。インターナショナルスクールの多くは一条校ではないため、この違いは進路設計上とても大切です。
関西のIB・国際教育はいま、どうなっているか
「関西には選択肢が少ない」と思われがちですが、実はIB認定校は着実に増えています。大阪府では、大阪府立水都国際高等学校の国際バカロレアコースがDPの認定を受けています。大阪府によれば、同校は府内の公立学校として唯一のIB認定校で、全国初の公設民営による併設型の中高一貫教育を展開し、管理・運営は学校法人大阪YMCAが担っています。ほかにも大阪女学院高等学校、近畿大学附属高等学校、大阪国際高等学校がDPを、大阪教育大学附属池田中学校がMYPを提供しています。
近隣県に目を向ければ、奈良県立国際高等学校がDP、奈良県立国際中学校と育英西中学校がMYP、兵庫県のAIE国際高等学校がDPを実施しています。全国では、文部科学省IB教育推進コンソーシアムの2026年6月30日時点のデータで、認定校220件・候補校53件の合計273件(プログラム単位)。実際の学校数で数えると、認定校は一条校95校と非一条校73校の合計168校です。同じ学校がPYPとMYPとDPを持てば3件と数えられるので、この違いは知っておくと数字に振り回されずに済みます。
こうして見ると、関西のご家庭の選択肢は「IBを選ぶか」だけではなく、「IB以外の英語重視型の中高一貫校を選ぶか」も含めて考える段階に入りつつある、と言えそうです。広尾学園大阪の登場は、その選択肢をもう一つ増やすものとして受け止めるのが自然でしょう。
保護者への影響と今できる対応
では、実際にどのご家庭が、どんな準備をしておけばよいのでしょうか。学年を数えてみると、2028年4月に中学校へ入学するお子さまは、2026年8月時点で原則として小学5年生にあたります。日本の学校は4月始まりですので、いまの小学5年生が6年生になった翌年度が、新体制1年目の入学時期にあたります。「まだ先の話」と思っていたら、意外と目の前の話なんですよね。
- 現在の小学5年生のご家庭:新体制1年目の中学入試を受ける学年にあたります。ただし入試科目も定員も未発表のため、特定校に絞った対策よりも、関西の私立中入試に共通する基礎学力の積み上げを優先するのが安全です
- 海外赴任中・帰国予定のご家庭:帰国生の受け皿を意識した学校づくりが語られていますが、帰国生入試の有無や条件は未発表です。水都国際、大阪女学院、近畿大学附属など既存のIB校・国際コースも並行して情報収集しておきましょう
- 現在の金蘭会中高に在籍・受験を検討中のご家庭:2027年度入試までは金蘭会として実施される見込みと報じられていますが、在校生の扱いや移行措置は学校に直接確認するのが確実です
- 高校からの進学を考えるご家庭:公式サイトは高校募集を引き続き行うとしています。詳細発表を待ちましょう
今できる3つの準備 1. 金蘭会学園の公式サイトの特設ページをブックマークし、更新を定期的に確認する。2. お子さまがIB型(探究・論文重視)の学び方に向いていそうか、それとも英語で教科を学ぶ環境のほうが合いそうかを考えておく(大阪校の方式は未発表です)。3. 関西の既存のIB校・国際コース校の説明会に、今のうちから足を運んで比較の物差しを持っておく。
新設校・改編校の検討で一番むずかしいのは、「実績がまだない」という点です。パンフレットの理念は魅力的でも、6年後に本当にその教育が回っているかは誰にも保証できません。だからこそ、説明会では理念よりも教員体制、英語で教える教科の具体的な範囲、進路指導の担当者、既存校からの支援の中身といった、運用の実像が見える質問をぶつけてみることをおすすめします。
ご注意ください:東京の広尾学園にあるコース名(本科・インターナショナル・医進サイエンスなど)が、そのまま大阪に設置されると決まったわけではありません。東京校にあるAG・SGのような英語力別のグループ分けを大阪でも採用するかどうかも公表されていません。公式サイトも「教育構想、募集要項などの詳細は決定次第順次公開」としています。学習塾や情報サイトの予想と公式発表は、必ず区別して判断してください。
まとめ
- 公式発表済みの計画: 大阪市北区の金蘭会中学校・高等学校が2028年4月に「広尾学園大阪中学校・高等学校」へ校名変更し、共学化する予定と公式発表されています。新設校ではなく既存校の校名変更・共学化で、設置者は学校法人金蘭会学園のままです
- 関係性: 東京の学校法人順心広尾学園とは教育連携であり、法人の合併ではありません。広尾学園、広尾学園小石川に続く3校目という位置づけです
- IBではない: 広尾学園と広尾学園小石川はIB認定校ではありません。東京校では英語力に応じてAG(授業の多くを英語で実施)とSG(英語を基礎から伸ばす)に分け、AP・SAT対策を組み合わせた独自モデルをとっています。大阪でのIB導入方針も発表されていません
- 未確定が多い: コース構成、定員、学費、入試科目、帰国生入試の扱いはいずれも未発表です。報じられている1,200人規模や東京会場実施は構想・検討段階と受け止めましょう
- 今できること: 新体制1年目の中学入試を受けるのは、2026年8月時点で小学5年生の学年です。特定校に賭けるのではなく、関西の既存IB校・国際コース校と並べて比較する準備を進めておくのが現実的です
出典・参考リンク
- 学校法人金蘭会学園: 広尾学園大阪 特設ページ(2026年7月17日)
- 学校法人金蘭会学園: 広尾学園大阪 プレスリリース(2026年7月17日)
- 広尾学園中学校・高等学校: 広尾学園大阪に関するお知らせ(2026年7月17日)
- 京都新聞デジタル: 大阪中心部「将来の難関進学校」が28年入試「東京実施」検討 生徒1200人規模へ、帰国生受け皿にも(2026年8月24日)
- 広尾学園中学校: インターナショナルコース(AG・SG)紹介ページ
- 文部科学省IB教育推進コンソーシアム: IB認定校・候補校(2026年6月30日時点)
- 文部科学省IB教育推進コンソーシアム: DPの概要
- 金蘭会高等学校・中学校: 金蘭会クロニクル(沿革)
- 大阪府: 大阪府立水都国際中学校・水都国際高等学校の紹介(2022年9月1日)
- 大阪府立水都国際中学校・高等学校: 公式サイト

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