「イギリス王室ゆかりの名門校が、和歌山に全寮制の学校をつくるらしい」――そんなニュースを目にして、思わず二度見してしまった保護者の方も多いのではないでしょうか。しかも学費は年間800万円超と報じられていて、驚きと同時に「うちには関係ない話かも」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
でも、この動きは単なる「超高額校の登場」では終わらない話です。ここ数年、英国の伝統校が次々と日本に姉妹校を開いていて、日本にいながら海外ボーディングスクール型の教育を受けるという選択肢が、静かに広がってきています。国際バカロレア(IB)や海外大学進学を視野に入れているご家庭にとっては、比較検討の材料が一つ増えることになります。
この記事では、報じられている内容と、和歌山市や運営法人の公式発表をもとに、何が決まっていて何がまだ決まっていないのかを整理します。学費のリアル、IBとの関係、そして日本の就学義務との兼ね合いまで、保護者目線で確認していきましょう。
ニュースの概要
2026年8月21日、ABCテレビ制作のニュースがYahoo!ニュースで配信され、英国の全寮制校ゴードンストウンの姉妹校が和歌山市に開校予定であること、学費が年間800万円を超える見込みであることが報じられました。セーリング活動に適した立地が候補地選定の理由の一つとして紹介されています。
この計画自体は、2026年に突然出てきたものではありません。和歌山市は2025年7月31日の市長記者会見で誘致を公表し、2025年8月6日には学校法人OCC、和歌山市、サンヨーホームズ株式会社、南海電気鉄道株式会社の4者による協定が結ばれています。設置・運営主体は学校法人OCCで、施設整備や交通・地域連携をそれぞれの企業が担う枠組みです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 現在の公表名称(和歌山市の資料・報道)はゴードンストウン・ジャパン・ウエスト校。認可上の最終的な正式名称は未確認です(発表時は「日本校(仮称)」と紹介されていました) |
| 所在地(予定) | 和歌山県和歌山市 梅原地区/敷地約15ヘクタール |
| 開校予定 | 2027年9月 |
| 設置・運営 | 学校法人OCC(和歌山市・サンヨーホームズ・南海電気鉄道と4者協定) |
| 対象学年 | 日本の小学6年~高校3年に相当する7年制・男女共学 |
| 規模 | 1学年約100人、全校約700人。全寮制 |
| 学費(報道ベース) | 寮費等を含め年間800万~1,000万円程度と報じられています |
| 法的位置づけ | 学校教育法第1条の「一条校」とはせず、各種学校として運営する予定 |
ポイント:開校時は全学年が一斉にそろうわけではなく、和歌山市の説明では小学6年から中学3年に相当する4学年から順次受け入れる計画とされています。2027年9月に小学6年生になるのは、2026年8月現在で小学5年生のお子さまです。中学3年生相当なら、いまの中学2年生。意外と「もう検討を始める時期」というご家庭がいらっしゃるんです。
背景と解説
ゴードンストウンとはどんな学校か
ゴードンストウンは、スコットランド北部のモレイ地方、エルギン近郊にある全寮制の私立校です。1934年、ドイツから亡命した教育者クルト・ハーンによって創設されました。英国王室との縁が深く、エディンバラ公フィリップ殿下、そしてチャールズ3世国王が学んだ学校として知られています。
同校が掲げる校訓が「Plus est en vous」という言葉です。学校公式サイトでは、英語で「There is more in you」と表現されています。また、ABCテレビはこの教育理念を「There Is More in You Than You Think.(自分でも気づいていない力が、あなたの中には眠っている)」と紹介しています。つまり、机の上の勉強だけで子どもを測らず、海での活動や奉仕活動を通じて自分の限界を更新していく――そういう教育観だということですね。
今回「セーリングに便利な立地」が話題になっているのも、この理念と無関係ではありません。ゴードンストウンは帆船を使った海洋教育で知られており、日本校でも和歌山マリーナシティを活動拠点として想定していると報じられています。海が近いことが、単なるロケーションの良さではなくカリキュラムの一部になるという発想です。
IB認定校ではない点は要チェック
ここは、IBを軸に学校選びをしているご家庭にとって一番大事なところかもしれません。英国本校のゴードンストウンは、公式サイトのカリキュラム紹介でGCSE、BTEC、A-Levelを提供していると明記しており、IBのディプロマプログラム(DP)は掲載されていません。IB公式の認定校検索でも、同校の登録は確認できませんでした。
日本校についても、運営法人の発表ではGCSEやA-Levelを含む国内外の大学進学を視野に入れた教育が検討されているとされていますが、IB認定の取得予定は公表されていません。「英国の名門校=IB校」と思い込んでしまうと、前提から食い違ってしまいます。
注意:IB認定は、学校ごとにIB機構(IBO)の審査を受けて取得するものです。英国の名門校の姉妹校であることと、IB認定校であることはまったく別の話です。お子さまにIB DPを受けさせたいのであれば、この学校は現時点では候補に入らない可能性が高い、という前提で情報収集を進めてください。
日本に増える英国系ボーディングスクール
実はここ数年、英国の伝統校が日本に姉妹校を開く動きが続いています。すでに開校している学校と比べてみると、和歌山の計画がどのくらいの水準なのかが見えてきます。
| 学校名 | 所在地・開校 | 学費の目安(2026-27年度) |
|---|---|---|
| ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン | 岩手県八幡平市/2022年8月 | 授業料・寮費込みで年約1,055万~1,146万円(入学金等は別途) |
| ラグビースクール・ジャパン | 千葉県柏市/2023年9月 | 通学・寮の形態を選択可。全寮の場合は諸費用を含めて年1,000万円前後 |
| マルバーン・カレッジ東京 | 東京都小平市/2023年8月 | 通学制(寮なし)。授業料は年約269万~291万円 |
こうして並べると、和歌山の年間800万~1,000万円という水準は、既存の英国系全寮制校とおおむね同じレンジにあることが分かります。ただし、これはあくまで報道されている見込み額です。正式な学費表はまだ公表されていないため、確定額としては受け取らないほうが安全でしょう。
保護者への影響と今できる対応
「関西圏から通える全寮制のブリティッシュスクール」という選択肢は、これまでほとんどありませんでした。海外駐在から帰国予定のご家庭や、英語環境を続けさせたいご家庭にとっては、検討の余地が出てきたと言えます。関西国際空港が近いことも、海外との行き来を考えると現実的な要素です。
一番の落とし穴は「就学義務」
費用よりも先に確認しておきたいのが、日本の法律上の扱いです。文部科学省は、日本国籍を持つ学齢の子どもを一条校として認められていないインターナショナルスクールに就学させても、法律で規定された就学義務を履行したことにはならない、と明示しています。
ゴードンストウンの日本校は、運営法人の発表によれば一条校ではなく各種学校として運営する予定です。義務教育年齢にあたる小学6年生や中学生を通わせる場合、この点をお住まいの市区町村の教育委員会に必ず確認しておく必要があります。「学費が払えるか」以前の、制度上の確認事項なんです。
いま確認しておきたいチェックリスト
- 資格の出口:どの資格(GCSE、A-Level、IB DPなど)で卒業するのか。日本の高校卒業資格が得られるのかどうか
- 就学義務の扱い:義務教育年齢の場合、居住自治体の教育委員会にどう届け出るか
- 学費の総額:授業料と寮費だけでなく、入学金、施設費、研修旅行費、制服代までを含めた年間総額
- 奨学金:和歌山市の説明では奨学生を2~3割受け入れる計画とされていますが、募集要項は未公表です。条件が出た時点で必ず確認を
- 英語力の要件:ABCテレビによると、授業はすべて英語で行う予定とされています。入学時にどの程度の英語力が求められるのか
- 開校時期のずれ:開校は2027年9月の予定で、9月始まりです。日本の4月始まりの学年とどう接続するのか
ポイント:新設校を検討するときは、開校前の情報だけで決めないことをおすすめします。教員体制、寮の運営、初年度の生徒構成といった「実際に通ってみないと分からない部分」は、開校後の説明会や在校生の様子から見えてきます。まずは公式サイトの情報配信に登録して、正式な募集要項が出るのを待つ、というスタンスが現実的ではないでしょうか。
まとめ
- 報道の内容: 2026年8月21日配信のニュースで、英国ゴードンストウンの姉妹校が和歌山市に開校予定であること、学費が年間800万円超の見込みであることが報じられました
- 計画の概要: 開校予定は2027年9月、和歌山市梅原地区。全寮制・男女共学で、日本の小学6年から高校3年に相当する7年制、全校約700人規模の計画です
- IBとの関係: 英国本校はIB認定校ではなく、GCSE・BTEC・A-Levelを提供しています。日本校のIB認定についても公表されていません
- 法的位置づけ: 一条校ではなく各種学校として運営される予定で、日本国籍の学齢児童生徒の就学義務との関係を教育委員会に確認する必要があります
- 学費は未確定: 年間800万~1,000万円は報道ベースの見込み額です。正式な学費表・募集要項の公表を待って判断してください
出典・参考リンク
- Yahoo!ニュース(ABCニュース): イギリス王室ゆかりの海外名門校が和歌山に 全寮制で学費は年間800万円超 選ばれた理由はセーリングに便利な立地?(2026年8月21日)
- 学校法人OCC: 英国ゴードンストウン校の姉妹校開設について(2025年8月6日)
- 和歌山市: 市長記者会見(2025年7月31日)
- ABCテレビ: イギリス王室ゆかりの海外名門校が和歌山に 全寮制で学費は年間800万円超(2026年8月21日)
- 和歌山市: ゴードンストウン・ジャパン・ウエスト校「第1回パートナーシップ会議」を開催します(2026年7月14日)
- ゴードンストウン・ジャパン 公式サイト
- Gordonstoun: History(英国本校公式・沿革/創設者/卒業生)
- Gordonstoun: Senior Academic Curriculum(英国本校公式)
- 国際バカロレア機構(IBO): Find an IB School
- 文部科学省: 学齢児童生徒をいわゆるインターナショナルスクールに通わせた場合の就学義務について
- ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン: 学費(Fees and Financing)
- ラグビースクール・ジャパン: 学費(Fees)
- マルバーン・カレッジ東京: Tuition Fees

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