「これだけ翻訳AIが賢くなったのに、うちの子はまだ英語を勉強しないといけないのかしら」――そんな疑問が頭をよぎったことはありませんか。スマートフォンをかざせば海外の看板が訳され、ChatGPTに頼めば英作文もあっという間に仕上がる時代です。正直なところ、「英語学習や留学にかけるお金と時間は、これからも意味があるのだろうか」と迷うご家庭は多いのではないでしょうか。
そんな中、2026年8月19日に発表された一つの意識調査が注目を集めました。オーストラリア留学の支援サービス「Mirai Bridge」(ラグザス株式会社が提供)が全国の高校生・大学生300人に聞いたところ、86.3%が「生成AIがあっても英語力は必要」と答え、84.3%が「AIがある現在でも留学には価値がある」と回答したというものです。
興味深いのは、そう答えたのが、生成AIをいちばん身近に使いこなしている当の若い世代だという点です。この記事では調査の中身をていねいに読み解きながら、国際教育やIB(国際バカロレア)を視野に入れているご家庭が、いま英語と留学にどう向き合えばよいのかを一緒に考えていきます。
ニュースの概要
今回の調査を実施・公表したのは、ラグザス株式会社(RAXUS INC.、大阪市北区大深町3番1号 グランフロント大阪タワーB18階、代表取締役社長・福重生次郎)が提供する留学支援サービス「Mirai Bridge」です。2026年8月19日にPR TIMESでプレスリリースが配信され、同日、エキサイトニュースなどの媒体にも転載されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査主体 | Mirai Bridge(ラグザス株式会社が提供する留学支援サービス) |
| 調査対象 | 全国の高校生・大学生 |
| 回答数 | 300人 |
| 調査期間 | 2026年8月13日~8月17日 |
| 調査方法 | インターネット調査 |
| 発表日 | 2026年8月19日 |
数字で見る「AIと英語」への本音
リリースで公表された主な結果を整理すると、次のようになります。
| 質問のテーマ | 結果 |
|---|---|
| 生成AIの利用頻度 | 月に数回以上利用している 90.0% |
| AIが普及しても英語力は必要か | 必要(計)86.3%(非常に38.0%+やや48.3%)/あまり必要でない9.7%/全く必要でない4.0% |
| AIの普及で英語学習への意識は変わったか | 以前より勉強したい(計)55.0%/特に変わらない38.7%/勉強しなくてよい6.3% |
| AIがある現在でも留学に価値はあるか | 価値がある(計)84.3%(非常に38.0%+やや46.3%)/あまり価値がない12.0%/全く価値がない3.7% |
もう一つ見逃せないのが、「AIでは代替できないと感じる英語力・能力」を尋ねた設問です。最も多かったのは「コミュニケーション能力」で57.0%、続いて「会話力」33.7%、「友人づくり」30.7%、「異文化理解」28.3%という結果でした。「特にない」と答えた人は9.7%にとどまっています。
また、留学に価値があると答えた253人にその理由を聞いたところ(複数回答)、「現地でしかできない経験がある」60.9%、「異文化交流ができる」44.3%、「コミュニケーション能力が身につく」42.3%、「英語を実際に使う環境だから」32.4%、「AIでは体験を代替できない」23.7%という順になりました。
読むときの注意点:この調査は留学支援サービスを運営する企業が自社で実施・公表した自主調査で、回答数は300人です。回答者の男女比や学年構成、抽出方法までは公表されていません。日本の高校生・大学生全体を厳密に代表する統計ではなく、「いまの若い世代の空気感を示す一つの参考データ」として受け止めるのが適切だと思います。
背景と解説
AIを最も使っている世代が「英語は必要」と答えた意味
この調査で個人的にいちばん印象的だったのは、回答者の90.0%が生成AIを月に数回以上使っているという点です。つまり、AIを「よく知らないから怖い」という立場ではなく、日常的に使いこなしたうえで「それでも英語力は必要」と答えているということなんです。
さらに、AIの普及によって「以前より英語を勉強したいと思うようになった」という回答が計55.0%に達し、「勉強しなくてもいいと思うようになった」は6.3%にとどまりました。AIが英語学習の意欲を奪うどころか、むしろ「AIを使いこなすには自分にも力が要る」という感覚につながっている様子がうかがえます。
その理由は、「AIでは代替できない能力」の回答を見るとよく分かります。上位に並んだのは、コミュニケーション能力、会話力、友人づくり、異文化理解――いずれも「訳す」ことではなく「関係をつくる」ことに関わる力です。つまり、翻訳は肩代わりできても、目の前の相手と信頼関係を築く作業までは肩代わりできない、ということですよね。
ポイント:AI時代に価値が下がるのは「情報を訳す作業」であって、「人と関わる力」ではありません。お子さまの英語学習を考えるときも、テストの点数だけでなく「人と話して何かを一緒に進める経験」を積めているかどうかが、これからの見極めどころになりそうです。
留学は減っているのか――公的統計で確認すると
「AIがあるから留学は減っているのでは」と思われるかもしれませんが、公的なデータを見るとむしろ逆の動きが読み取れます。文部科学省が2026年5月29日に公表した「『日本人学生の海外留学状況』及び『外国人留学生の在籍状況調査』について」によれば、2024年度に日本の大学等が把握した海外留学者数は91,054人で、前年度から1,875人(2.1%)増加しました。このうち留学期間が1か月未満の短期留学が60,301人を占めています。
ここで注意したいのは、この数字が大学等を通じて把握された人数であり、高校生を直接対象とした統計ではないという点です。それでも、留学という選択肢が縮んでいるどころか、短期を中心に広がりを見せていることは押さえておいてよいでしょう。
IB教育の視点――言語はいまも学びの中心にある
国際バカロレア(IB)に関心をお持ちのご家庭にとっても、この話は他人事ではありません。IBのディプロマプログラム(DP)では、言語習得(Language acquisition)が科目グループの一つとして位置づけられています。国際バカロレア機構(IBO)の公式説明によれば、その中の「言語B」は、すでにその言語を学んだ経験のある生徒を対象とした科目で、標準レベル(SL)と上級レベル(HL)があり、言語を通じたコミュニケーション能力と異文化理解の育成を重視しています。
つまり、IBが言語科目に求めているのは「正確に訳せること」ではなく、「その言語を使って考え、伝え、他文化を理解すること」なんです。今回の調査で高校生・大学生が挙げた「AIでは代替できない能力」と、IBが言語教育で育てようとしている力は、驚くほど重なっています。生成AIが翻訳を担う時代になっても、IBの言語教育が目指す方向はぶれていない、と言えるのではないでしょうか。
保護者への影響と今できる対応
とくに関係が深いのはこんなご家庭
- お子さまの英語教育に、これからどれくらい投資すべきか迷っているご家庭
- 高校・大学での短期留学や交換留学を検討しているご家庭
- IB認定校やインターナショナルスクールへの進学を視野に入れているご家庭
- 海外駐在中で、帰国後の英語力維持をどうするか考えているご家庭
今の時期にできる具体的な準備
調査結果を踏まえると、これからの英語学習・留学準備では次のような視点が役に立ちそうです。
- 「使う場面」から逆算する:試験対策だけでなく、実際に英語で人と話す機会(オンライン交流、地域の国際交流イベント、短期プログラムなど)を意識的に確保する
- AIを「敵」ではなく「練習相手」にする:発音練習や表現の言い換えなど、AIを使った学習は有効です。ただし、宿題の丸投げにならないよう、学校のAI利用ルールは必ず確認しましょう
- 短期留学から試す:文科省の統計でも1か月未満の短期が多数を占めています。いきなり長期を決めず、まず短期で相性を確かめる進め方は現実的です
- 費用と時期を早めに家族で共有する:留学費用は渡航先・期間・為替で大きく変わります。学校の説明会や複数のエージェントで見積もりを比較しておくと安心です
- お子さま自身の言葉で目的を確認する:「なぜ行きたいか」を本人が語れることが、留学の満足度を大きく左右します
ポイント:今回の調査は、留学に価値を感じる理由の1位が「現地でしかできない経験がある」(60.9%)でした。留学の価値を「英語力の伸び」だけで測ろうとすると、費用対効果の話に行き詰まってしまいます。生活・友人関係・異文化での試行錯誤まで含めて評価する視点を、ご家庭の中で共有しておきたいですね。
数字を鵜呑みにしないという姿勢も大切に
一方で、留学支援サービスによる自主調査である以上、結果の読み方には慎重さも必要です。「86.3%が必要と答えた」という数字は説得力がありますが、それは進路を決める根拠そのものではなく、あくまで判断材料の一つです。お子さまの性格、学校のカリキュラム、家計の状況を重ねたうえで、ご家庭なりの答えを出していくことが何より大切なのではないでしょうか。
まとめ
- 調査の概要: 留学支援サービス「Mirai Bridge」(ラグザス株式会社提供)が2026年8月19日に公表。全国の高校生・大学生300人に2026年8月13日~17日にインターネットで実施
- 主な結果: 86.3%が「生成AIがあっても英語力は必要」、84.3%が「AIがある現在でも留学に価値がある」と回答
- 回答者の実像: 90.0%が生成AIを月に数回以上利用しており、AIを使いこなしている世代の実感である点が重要
- AIに代替されない力: コミュニケーション能力57.0%、会話力33.7%、友人づくり30.7%、異文化理解28.3%。IBの言語習得科目が重視する方向とも重なる
- 読み方の注意: 企業の自主調査(回答数300人)であり、全体を代表する統計ではないため、参考データとして扱う
出典・参考リンク
- PR TIMES(ラグザス株式会社): 高校生・大学生の86.3%が「ChatGPTなどの生成AIがあっても英語力は必要」、84.3%が「AI時代でも留学に価値」―Mirai Bridge調べ(2026年8月19日)
- エキサイトニュース: 高校生・大学生の86.3%が「ChatGPTなどの生成AIがあっても英語力は必要」、84.3%が「AI時代でも留学に価値」―Mirai Bridge調べ(2026年8月19日)
- Mirai Bridge: オーストラリア留学支援サービス公式サイト
- 文部科学省: 「日本人学生の海外留学状況」及び「外国人留学生の在籍状況調査」について(2026年5月29日公表)
- International Baccalaureate Organization: Diploma Programme Language B

コメント