【文科省】国際競争力けん引学部に東北大など10学部 留学生の定員特例で大学の国際化はどう進む?

「うちの子には、できれば国際的な環境で学ばせてあげたい」――そう考えたとき、多くのご家庭がまず思い浮かべるのは海外の大学ではないでしょうか。でも同時に、費用のこと、安全のこと、そして本人の語学力のことを考えると、なかなか一歩を踏み出せない。そんなジレンマを抱えていらっしゃる方も多いのではないかと思います。

そんな中、2026年8月26日に文部科学省がひとつの発表を行いました。「国際競争力けん引学部等」として、東北大学・筑波大学・広島大学の10学部等を新たに認定した、というものです。聞き慣れない制度名ですし、正直「うちには関係なさそう」と感じるかもしれません。でもこれ、日本の大学の中に、どれくらい国際的な学びの場が広がっていくのかを左右する話なんです。

この記事では、発表された内容を整理したうえで、この制度が実際には何をするものなのか、そして大学選びを控えたご家庭が「どこを誤解せずに読み取ればいいのか」を、保護者目線でかみくだいて解説します。

ニュースの概要

発表したのは文部科学省(高等教育局参事官(国際担当)付企画係)で、公表日は2026年8月26日です。翌8月27日には、教育情報サイト「リセマム」と同系列の教育業界ニュース「ReseEd(リシード)」でも報じられました。

認定されたのは、次の3大学10学部等です。

大学名 2026年度に認定された学部等
東北大学 工学部、農学部
筑波大学 理工学群、情報学群
広島大学 文学部、教育学部、法学部、経済学部、工学部、情報科学部

この認定は2025年度に続いて2回目です。2025年度分は2026年2月17日に認定されており、東北大学の理学部、筑波大学の人文・文化学群、社会・国際学群、人間学群、生命環境学群、医学群(看護学類・医療科学類のみ。定員抑制分野である医学類は除く)、体育専門学群、芸術専門学群、広島大学の理学部、生物生産学部、総合科学部の11学部等が対象でした。今回の10学部等を加えて、累計は3大学21学部等となっています。

認定の手続きは、「国際競争力けん引学部等の認定等に関する規程」(令和7年文部科学省告示第112号)第3条にもとづき、有識者委員会の意見を聴いたうえで文部科学大臣が行うものです。

背景と解説

「支援」といっても、お金が出る制度ではありません

まず、ここが一番誤解されやすいところなので先にお伝えしますね。この認定は、大学に補助金を配る制度ではありません。文部科学省の説明によると、認定を受けた学部等は、特例として収容定員の上限を一定程度超過することが認められる——つまり「規制がゆるくなる」タイプの制度なんです。

ポイント:大学には「収容定員充足率」(定員に対して実際に何人在籍しているか)の上限があり、超えると各種のペナルティの対象になります。この上限が、認定学部等では学部等の規模に応じて5ポイント引き上げられます。具体的には1.05倍→1.10倍、1.10倍→1.15倍、1.15倍→1.20倍となります。適用が始まるのは、認定年度の翌年度4月1日から。今回認定された10学部等は2027年4月1日からです。

なぜ、この制度がつくられたのか

文部科学省が公表している資料には、その理由がはっきり書かれています。世界的に留学生の移動が大きく拡大しているのに、日本ではトップ大学を含めて特に学部段階での留学生割合が低いという現状があります。そして大学側からは、「定員超過率によるペナルティがあるために、留学生を積極的に受け入れにくい」という改善要望が出ていました。

つまり、優秀な留学生を受け入れたくても、定員の枠が壁になっていた。その壁を制度的に少しだけ広げよう、というのが今回の仕組みなんです。

制度創設の経緯としては、教育未来創造会議の「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ(第二次提言)」(2023年4月27日)と、中央教育審議会答申「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」(2025年2月21日)が挙げられています。

国が掲げている数値目標

この第二次提言では、2033年までの目標として次のような数値が示されています。

  • 外国人留学生の受入れ:40万人を目指す。学部段階の全学生に占める留学生の割合は3%から5%へ
  • 日本人学生の海外留学:全体で50万人を目指す。高等教育段階では学位取得等を目的とする長期留学が6.2万人から15万人へ、中短期が11.3万人から23万人へ。高校段階でも3か月未満の研修旅行が4.3万人から11万人へ、3か月以上の留学が0.4万人から1万人へ引き上げる目標が掲げられています

「受け入れ」だけでなく、日本人学生を海外に送り出す目標もセットになっている点、しかも高校段階の留学まで対象に含まれている点は、海外大学進学を考えているご家庭にとって注目すべきところではないでしょうか。

ちなみに日本学生支援機構(JASSO)の「2025(令和7)年度外国人留学生在籍状況調査結果」によると、2025年5月1日現在の留学生数は408,069人で、前年比21.2%増。ただしこのうち大学(学部)に在籍しているのは92,442人で、日本語教育機関や専門学校が大きな割合を占めています。「学部段階の国際化はこれから」という文部科学省の問題意識とも重なる数字です。

保護者への影響と今できる対応

誤解しやすい3つのポイント

ご注意ください:この制度でいう「外国人留学生」とは、在留資格「留学」で日本の大学等に在籍する人を指します。したがって日本国籍の帰国生や、国際バカロレア(IB)で学んだ国内在住の生徒の入試枠が広がるという話ではありません。国際系入試の動向は、各大学の募集要項で別途確認する必要があります。

もう一点。認定によって上限が引き上げられるのは「収容定員充足率の上限」であって、学部の収容定員そのものが増えるわけではありません。個々の大学の合格者数そのものは公表資料からは判断できませんが、文部科学省が公表しているQ&A(2026年4月28日時点版)には、本制度は日本人学生の数の増加を想定した制度ではなく、原則として日本人学生の数を増加させてはならないと明記されています。認定を受けた学部等については、日本人学生の数も含めて毎年フォローアップが実施されるとのことです。つまり「留学生の枠が広がったぶん、日本人の枠も一緒に増える」という制度ではない、ということですね。

そして三点目。認定の対象は学部・学群などの学士課程で、大学院と、定員抑制分野(医師・歯科医師・薬剤師・獣医師・船舶職員の養成に係るもの)は対象外です。医学科など医師養成課程を志望する場合には、直接の対象ではありません。ただし対象外となるのは学部まるごとではなく、あくまで定員抑制分野の学科です。文部科学省のQ&Aでも、定員抑制分野と非抑制分野の学科が併置されている学部については、非抑制分野の学科が特例の対象になるとされています。実際、2025年度に認定された筑波大学医学群は看護学類・医療科学類のみが対象で、医学類は除かれています。医学部・医学群のなかの看護学科や医療科学系など、定員抑制分野にあたらない課程は対象になる場合があるとご理解ください。

大学選びのときに見ておきたいこと

では、この認定はご家庭にとってどんな意味を持つのでしょうか。私は「大学の国際化への本気度を測る、ひとつの公的な目印になる」という点だと考えています。認定を受けるには、審査で外国人留学生の受入れ目標や、その達成方法、受入れ環境の整備、出身の国・地域の多様性の確保などを示す必要があるからです。受入れ目標は原則として、15年以内に現状から10%以上増やすこととされています。ただし、外国人留学生の割合がすでに10%以上ある学部等については、一律にさらに10%以上を求めるのではなく、現在の割合を踏まえた妥当な目標を設定することとされています。

  • 志望校のオープンキャンパスで、学部内の留学生比率や英語による授業の有無を具体的に聞いてみる
  • 留学生と日本人学生が実際に一緒に学ぶ科目・寮・プロジェクトがあるかを確認する(在籍しているだけでは交流は生まれません)
  • その大学の海外派遣・交換留学の実績を見る。受入れと派遣の両輪がそろっているかがポイントです
  • 認定学部等の一覧は文部科学省のページで公開されているので、志望校が含まれるか確認しておく

今後のスケジュール:文部科学省によると、次回の申請募集開始は2027年4月頃を予定しているとのことです。認定校は今後さらに増える可能性があります。志望校が現時点で入っていなくても、あわてる必要はありません。

海外大学進学を検討しているご家庭にとっても、この動きは無関係ではないと思うんです。国内の大学の中に多様な背景を持つ学生が増えれば、「日本の大学に進んで、そこから交換留学で海外へ」という道筋の現実味も増していきます。選択肢を「海外か国内か」の二択で考えず、その中間にあるルートも含めて眺めてみる。そんな視点を持っておくと、お子さまの進路の幅がぐっと広がるのではないでしょうか。

まとめ

  • 発表内容:文部科学省が2026年8月26日、東北大学・筑波大学・広島大学の10学部等を「国際競争力けん引学部等」に認定。累計は3大学21学部等
  • 制度の中身:補助金を出す支援事業ではなく、収容定員充足率の上限を規模に応じて5ポイント引き上げる特例制度。適用は2027年4月1日から
  • ねらい:学部段階で低い留学生割合を引き上げ、学修環境の国際化を通じて日本人学生のグローバル人材育成につなげること
  • 誤解しやすい点:対象は在留資格「留学」の外国人留学生。日本国籍の帰国生やIB生の入試枠の話ではなく、大学院と定員抑制分野も対象外
  • ご家庭にできること:志望校の留学生比率・英語による授業・海外派遣実績を具体的に確認する。次回の申請募集は2027年4月頃の予定

出典・参考リンク

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