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「探究学習って、結局どんな授業なんでしょう?」――お子さまの時間割にある「総合的な学習の時間」を見て、そんなふうに思われたことはありませんか。全国一律の教科書や定期テストを中心とする制度ではなく、学校が教材や評価方法を設計します。学校からのおたよりで「探究」という言葉を目にしても、いまひとつイメージがつかめない、というご家庭は多いのではないでしょうか。
そんななか、教育業界向けメディアのReseEd(リシード)が2026年8月25日、連載「先生の事情とホンネ」の第18回として、小中学校の「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」へと改められる方向性について、現場の教員の受け止めを伝える記事を公開しました。理念には賛成しつつも、指導や評価の難しさに不安を抱えている――そんな学校現場のリアルな声が紹介されています。
この記事では、いま何が検討されているのかを整理したうえで、国際バカロレア(IB)の探究学習とはどこが似ていて、どこが違うのかを、保護者の目線でかみくだいてお伝えします。
ニュースの概要
今回の記事は、株式会社イードが運営する教育業界向けメディアReseEd(リシード)に2026年8月25日に掲載されたものです。ReseEdと保護者向け媒体「リセマム」は、いずれも株式会社イードが運営しています。記事の掲載先は教育関係者向けのReseEdです。執筆は大阪市公立小学校教諭の松下隼司氏。令和4年度の文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞した現役教員が、自身の立場から次期学習指導要領の検討内容を読み解く、という構成になっています。
記事が取り上げているのは、文部科学省の中央教育審議会 教育課程部会に置かれた「生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループ」での議論です。このワーキンググループは第8回会合を2026年7月3日に開催し、2026年8月4日には「取りまとめ(案)※会議後修正」が公表されています。
ここは誤解しやすいポイントです。小中学校の名称変更や、小学校に「情報の領域」を設けるという話は、2026年8月時点ではワーキンググループの取りまとめ「案」に示された検討の方向性であり、次期学習指導要領として告示されたものではありません。正式な名称や授業時数、実施時期は、今後の答申と告示を経て決まります。
ReseEdの記事では、探究学習の本質的な変化は「与えられた課題を調べて解決する学習」から「子供自身が問いを立て、試行錯誤し、行動や新しい価値につなげる学び」への転換にある、と説明されています。一方で、子供ごとに異なる問いをどう支えるのか、単一の正解がない学びをどう評価するのか、といった実務面の難しさが現場の本音として語られていると報じられています。小学校高学年に検討されている「情報の領域」については、年間35コマ程度、週1コマほどの授業量が示されているとのことです。
背景と解説
高校ではすでに「探究」に変わっています
実は、名称の変更は高校ではすでに済んでいます。2018年3月に告示された高等学校学習指導要領で、高校の「総合的な学習の時間」は「総合的な探究の時間」へと改められました。2022年度の入学生から学年が上がるにつれて順次適用され、全学年が新しい課程になったのは2024年度です。標準単位数は3単位から6単位とされています。
つまり、いま検討されているのは小中学校を高校にそろえ、小中高の12年間を通して探究の学びをつなげようという考え方なんです。現在の標準授業時数は、小学校の第3学年から第6学年が各学年70単位時間、中学校は第1学年が50単位時間、第2・第3学年が各70単位時間となっています。
「学習」と「探究」は何が違うの?
言葉だけ見ると小さな違いに思えますよね。でも、この二文字には教育のねらいの変化が込められています。
| 観点 | 総合的な学習の時間(小中の現行) | 総合的な探究の時間(高校の現行) |
|---|---|---|
| 問いの立て方 | 学校や先生がテーマや学習環境を用意する場合も多い | 生徒自身が課題を設定することを一層重視 |
| 学びのねらい | 横断的・総合的な学習を通じた課題解決、自己の生き方を考える | 実社会・実生活の課題を、自己の在り方生き方と一体的に考える |
| 制度上の単位 | 年間の授業時数(単位時間) | 単位制(標準3から6単位) |
ただ、誤解しないでいただきたいのは、現行の小中学校の「総合的な学習の時間」でも、児童生徒が自ら課題を見付け、探究的に解決していくことはすでに目標とされているということです。今回の案は、その探究性を名称の上でも明確にし、小中高を通じて一層充実させていこうという方向性なんです。生成AIに聞けば一瞬で答えらしきものが返ってくる時代だからこそ、「何を問うか」「その答えは本当に信じてよいのか」を自分で判断する力が要る――ReseEdの記事もそうした問題意識に立っています。
IBの探究学習とはどう違うのでしょう
「探究」と聞いて国際バカロレアを思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれません。IBはまさに探究を中心に据えた教育プログラムですが、日本の「総合的な探究の時間」とは位置づけがかなり違います。
- PYP(3歳から12歳):6つの教科横断的テーマを枠組みとして「Units of Inquiry(探究の単元)」を組み立てます。探究は特定の一時間の枠ではなく、カリキュラム全体を貫く形で設計されるのが特徴です
- MYP(おおむね11歳から16歳):MYP第5年次まで履修する生徒は「パーソナルプロジェクト」に取り組み、IBによる外部モデレーション(外部検証)を受けます。第3年次または第4年次でMYPを修了する場合は「コミュニティープロジェクト」に取り組みます。いずれも自分でテーマを決め、長期にわたって調査・制作・振り返りを行う点は共通です
- DP(16歳から19歳):必修のコアは、課題論文(EE)、知の理論(TOK)、創造性・活動・奉仕(CAS)の3要素です。EEは4,000語(日本語では8,000字)の論文で、TOKとEEの評価の組合せで最終スコアに最大3点が加算されます。CASは点数には加算されませんが、資格取得に必要です(IB公式:DP、IB公式:評価の説明)
ポイント:いちばん大きな違いは「共通の物差しがあるかどうか」です。ただし、IBといっても全プログラムに共通の成果物があるわけではなく、プログラムごとに取り組む成果物と評価方法が定められています。DPでは必修コアの課題論文(EE)がIBによる外部評価の対象となり、MYPを第5年次まで履修する生徒のパーソナルプロジェクトはIBによる外部モデレーション(外部検証)の対象になります。MYPを第3年次または第4年次で修了する場合は、外部モデレーションの対象ではないコミュニティープロジェクトに取り組みます。いずれにせよ、国際共通の基準が用意されているという点が特徴です。一方、日本の「総合的な探究の時間」には、EEのような全国一律の論文形式やIB共通の詳細な評価基準はありません。学習指導要領の目標と3観点を踏まえ、各学校が具体的な評価を定めます(文部科学省資料、評価に関する資料)。
どちらが優れている、という話ではありません。DPはIB資格取得につながる一方、PYP・MYPは探究型の教育プログラムであり、資格取得との関係はDPと異なります(IB公式:PYP、IB公式:DP)。日本の探究は学校ごとの自由度が高く、学校・地域の資源や連携体制が多様なため、内容や実施環境に違いが生じ得ます。ワーキンググループの取りまとめ(案)でも、学校や地域によって活用できる資源の状況が多様であることを踏まえ、外部との連携体制のつくり方や、費用負担・必要なリソースの確保の方法を検討する必要性が示されています(文部科学省資料)。
保護者への影響と今できる対応
「では、うちの子には何が起きるの?」というのが、いちばん知りたいところですよね。
まず落ち着いていただきたいのは、いますぐ時間割が変わるわけではないということです。繰り返しになりますが、小中学校の名称変更や「情報の領域」の新設は検討段階です。実施時期は今後の告示で決まりますので、公式発表を待つのが確実です。そのうえで、いま関心を持っておく価値があるのは次のようなご家庭です。
- 現在小学校に通っているお子さまがいるご家庭(学年や移行措置によって異なりますが、現在の小学生の一部は対象となる可能性があります。文科省の最新発表を確認してください)
- 中学受験・高校受験で「探究」や「自己表現」を評価する入試を検討しているご家庭
- IB認定校(PYP・MYP・DP)への進学を選択肢に入れているご家庭
- お子さまが教科のテストでは力を出しきれないタイプだと感じているご家庭
家庭でできることは、特別なことではありません。むしろ日常の会話のなかにあります。
- 答えではなく問いを一緒に育てる:「それ、なんでだと思う?」と返してみる。すぐ答えを教えないことが、探究の第一歩になります
- 情報の出どころを確かめる習慣:AIや検索で出てきた内容を、図鑑や公式サイトなど別の資料で裏を取る。ReseEdの記事でも、生成AIの出力をそのまま答えにしない姿勢の大切さが語られています
- 過程をほめる:発表の出来ばえだけでなく、テーマを決めるまでに迷った時間や、うまくいかずにやり直した経験を認めてあげてください
- 学校の探究の様子を聞いてみる:学校説明会や保護者会で「探究の時間はどんなテーマを扱っていますか」「成果はどう評価されますか」と尋ねると、その学校の姿勢がよく見えます
ポイント:探究学習は、通常の教科の授業では見えにくかったお子さまの関心や粘り強さが表に出る場でもあります。ReseEdの記事では、準備や評価の負担があるなかで、教員が探究の意義を感じていることが紹介されています。成績表の数字だけでは測れない成長を見つけるチャンス、と考えてみてはいかがでしょうか。
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まとめ
- 報じられた内容: ReseEdが2026年8月25日、大阪市公立小学校教諭の松下隼司氏による「総合的な探究の時間」への転換をめぐる現場の受け止めを掲載しました
- 制度の現状: 高校では2018年3月告示の学習指導要領で「総合的な探究の時間」に改められ、2022年度入学生から順次実施、2024年度に全学年が新課程になりました
- 検討中の内容: 小中学校の名称変更や小学校の「情報の領域」新設は、2026年8月4日公表のワーキンググループ取りまとめ(案)に示された方向性であり、決定事項ではありません
- IBとの違い: IBはプログラムごとに成果物と評価方法が定められており、DPの課題論文(EE)は外部評価、MYP第5年次のパーソナルプロジェクトは外部モデレーションの対象です(第3・第4年次で修了する場合はコミュニティープロジェクト)。一方、日本の探究は各学校が内容を設計します。学校・地域の資源や連携体制は多様で、内容や実施環境に違いが生じ得ます
- 家庭でできること: 答えを急がず問いを育てる会話、情報の裏取りの習慣、そして結果より過程を認める姿勢が、これからの学びの土台になります
出典・参考リンク
- ReseEd(リシード): 【先生の事情とホンネ #18】「総合的な探究の時間」へ変わる、現場のホンネと事情は?(2026年8月25日)
- 文部科学省: 教育課程部会 生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループ
- 文部科学省: 生活、総合ワーキンググループ取りまとめ(案)※会議後修正(2026年8月4日)
- 文部科学省: 平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文・解説)
- 文部科学省IB教育推進コンソーシアム: IBのプログラム(PYP)
- 文部科学省IB教育推進コンソーシアム: IBのプログラム(DP・CP)
- International Baccalaureate Organization: Project study in the MYP(MYPプロジェクト)

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