「うちの子、マンガやアニメが大好きなんです。でも、それって進路になるのかしら」――お子さまの部屋に積み上がったコミックスを見ながら、そんなふうに思ったことはありませんか。好きなことに没頭している姿は嬉しい反面、「勉強とは別物」と切り分けてしまいがちですよね。
ところが2026年8月28日、日経クロストレンドが「米サウスカロライナ大が教える日本のマンガ制作」という記事を配信しました。アメリカの州立総合大学で、日本のマンガの作り方が正規の授業として教えられている、という内容です。
実はこれ、一部の物好きな先生が趣味で開いている講座ではありません。大学の公式な履修要覧(シラバス集)にきちんと科目番号付きで載っている、単位が出る正規科目なんです。この記事では、報じられた内容と、大学の公式情報から確認できる事実を整理しながら、「日本文化を専門的に学べる米国大学」を探すご家庭が今からできることをお伝えします。
ニュースの概要
報じたのは日経クロストレンド(日経BP)で、公開は2026年8月28日です。記事は、米サウスカロライナ大学(University of South Carolina、本校はサウスカロライナ州コロンビア)で、脚本家でもあるノースロップ・デイビス(Northrop Davis)教授が、コマ割り・物語構成・せりふ・キャラクター造形といった日本式のマンガ制作を学生に指導している様子を伝えています。同教授は長年この分野を担当してきたと報じられており、日本のマンガやアニメが「クールな文化」として若い世代を引きつけている実態が紹介されています。
なお、この記事は電子版の有料会員限定コンテンツのため、受講者数など本文中の細かい数字は一般公開部分では確認できませんでした。ここでは、大学の公式サイトと履修要覧で裏づけが取れた情報を中心にご紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大学名 | 米サウスカロライナ大学(University of South Carolina)/州立の総合大学 |
| 担当 | School of Visual Art and Design(視覚芸術・デザイン学科) |
| 科目 | FAME 523「The Art and Business of Manga and Anime」(3単位) |
| 履修条件 | FAME 321(Media Writing)をC以上で修了、または学科の許可 |
| 学位 | Film and Media, B.A.(卒業要件120単位) |
ポイント:科目名に「Art and Business」(芸術とビジネス)が入っている点は、公開されている履修要覧でも確認できます。ただし要覧に載っているのは科目名・単位数・概要(Advanced study of Manga and Anime)・前提条件までで、授業のなかで制作実習と産業の話にそれぞれどれだけ時間が割かれるのかまではわかりません。実際の授業内容は、シラバスや学科への問い合わせで確かめる必要があります。
背景と解説
「アメリカの大学でマンガ?」と意外に思われるかもしれませんが、履修要覧を見ると、この科目は決して孤立した存在ではないことがわかります。
サウスカロライナ大学のFilm and Media(映画・メディア)専攻には、Media Production(制作)とMedia Studies(研究)という2つの集中分野があり、FAME 523はその上級選択科目にあたります。周辺には、FAME 350「コミックス研究入門」、FAME 351「アメリカン・コミック産業史」、FAME 390「2Dアニメーション」、FAME 573「3Dアニメーション」といった科目が並んでいます。つまり、マンガ・アニメを含む「コミックス/アニメーション」という分野が、映像メディア教育の一部としてカリキュラムに組み込まれているということです。
もう一つ押さえておきたいのが、同じ大学の中にまったく別の入り口もあるという点です。言語・文学・文化学科には日本語や日本文化を学ぶJapanese Minor(副専攻・18単位)が置かれ、その選択科目には、アニメーションを通して日本の文化と社会を考えるJAPA 353「Japanese Culture and Society through Animation」も挙げられています。
ここは進路選びで混同しやすいところなので、整理しておきますね。
- 作り手として学ぶ道:Film and Media専攻(制作・脚本・産業)。FAME科目群がこちら
- 文化として読み解く道:Japanese Minor(日本語・日本文化)。JAPA科目群がこちら
同じ「マンガ・アニメが好き」でも、手を動かして作品を作りたいのか、社会や文化の文脈で分析したいのかで、選ぶ学部も出願準備も変わってきます。お子さまがどちらのタイプかを見極めることが、実は最初の一歩なんです。
あわせて見ておきたいのが、米国の大学における日本語学習の規模です。全米の高等教育機関を対象にした現代語学文学協会(MLA)の2021年秋の調査では、日本語の科目履修登録数は65,661件で、ドイツ語(53,543件)を上回り、スペイン語、フランス語、アメリカ手話に次ぐ4番目に多い言語でした(これは延べの履修登録件数で、学生の実人数ではない点にご注意ください)。ただし、同じ調査シリーズの2009年(72,357件)や2016年(68,810件)と比べると登録数は減っており、「日本語学習が増え続けている」とは言えません。また、この履修規模がFAME 523のような科目の開講につながったという因果関係を示す資料も確認できませんでした。数字はあくまで、日本語が米国の大学で主要な外国語の一つであり続けている、という位置づけを示すものとして受け止めておきたいところです。
保護者への影響と今できる対応
「では、うちの子も出願できるの?」というのが、一番気になるところではないでしょうか。サウスカロライナ大学の公式ページから確認できる、日本在住の家庭に関係する条件を挙げます。
- 英語スコアの最低ライン:TOEFL iBT 77、IELTS 6.5、PTE 53、Duolingo English Test 115(学部新入生・留学生の場合)
- 出願締切:10月15日までの早期出願は12月中旬までに結果通知、11月15日はHonors College・Top Scholar対象、12月1日が通常の新入生出願締切。書類の提出期限はそれぞれ11月1日、12月1日、1月15日
- IBの扱い:公式の換算表に掲載されたHigher Level(HL)試験について、科目ごとの条件を満たすと単位が認定されます。多くは4以上が最低点ですが、認定される科目や単位数は試験ごとに異なり、English Bのように単位が認定されない試験もあります。Standard Level(SL)には単位を与えないと明記されています
ご注意ください:公式ページが示しているのは、あくまで出願に必要な最低要件です。この点数を満たすことが合格を保証するわけでも、入学後の学修が楽になることを保証するわけでもありません。志望する分野の授業でどんな読み書きが求められるのかも踏まえて準備を進め、要件は出願する年ごとに最新のものを大学へ確認してください。なお、TOEFL iBTは2026年1月21日から1〜6の新しい尺度が導入されており、移行期間中の扱いも必ず大学に確認が必要です。
そのうえで、ご家庭で今から取り組めることをチェックリストにしました。
- 「好き」を続けた記録を整理する:サウスカロライナ大学の新入生出願では、エッセイと活動歴を記入する欄が設けられています(同大学は、選考は主に高校での学業成績に基づくと説明しています)。描いた作品、投稿サイトでの発表、コンテスト応募などを続けてきたなら、活動歴として整理しておけます。ただし、作品そのものを提出できるか、どう評価されるかは出願先や専攻の要件によって異なるので、必ず確認してください
- 履修要覧(Academic Bulletin)を親子で読む:大学名や学部名だけで判断せず、科目番号レベルまで見るのが確実です。「本当にその授業があるか」「前提科目は何か」がわかります
- IBを選ぶなら、HLの選択を換算表と照らして:単位認定の対象は換算表に載っているHL試験で、必要な点数や認定内容は科目ごとに違います。どの科目をHLにするかで、入学後に免除される科目が変わります
- 締切から逆算する:秋入学の出願は前年の秋。英語試験は複数回受ける前提で、高2の後半には初回を受けておくと余裕が生まれます
- 費用の確認を早めに:州立大学は州外・留学生の授業料が州内学生と大きく異なります。学費と滞在費は必ず最新の公式ページで確認を
「マンガが好きだから」という理由で進路を決めるのは不安、というお気持ちもよくわかります。でも今回のニュースが教えてくれるのは、日本のマンガ・アニメが海外で学問と産業の対象として扱われている、という事実です。好きなものを入り口にしながら、脚本、映像制作、ビジネス、文化研究といった汎用性のある力を身につける道が確かにあるんですね。
まとめ
- 報道の内容: 2026年8月28日、日経クロストレンドが米サウスカロライナ大学でのマンガ制作教育を報道。ノースロップ・デイビス教授が指導していると伝えています
- 正規科目である: 大学の履修要覧にFAME 523「The Art and Business of Manga and Anime」(3単位)が掲載され、Film and Media, B.A.の上級選択科目として位置づけられています
- 入り口は2つ: 制作を学ぶFilm and Media専攻と、日本語・日本文化を学ぶJapanese Minor(18単位)は別プログラムです
- 出願の実務: 英語はTOEFL iBT 77/IELTS 6.5が最低要件、締切は10月15日・11月15日・12月1日。IBは換算表に掲載されたHL試験が科目ごとの条件つきで単位認定の対象で、SLは対象外です
- 今できること: 作品の記録を残す、履修要覧を科目番号まで確認する、HL選択と英語試験を締切から逆算する――この3つが出発点になります
出典・参考リンク
- 日経クロストレンド: 米サウスカロライナ大が教える日本のマンガ制作 「クールな文化」で若者魅了(2026年8月28日)
- University of South Carolina: Academic Bulletin – FAME科目一覧(FAME 523ほか)
- University of South Carolina: Film and Media, B.A. 学位要件
- University of South Carolina: Japanese Minor(日本語・日本文化 副専攻)要件
- University of South Carolina: Northrop Davis 教員プロフィール
- University of South Carolina: International Applicants(留学生の出願要件・英語スコア)
- University of South Carolina: A Level, AP and IB Credits(IB単位認定の方針)
- University of South Carolina: Freshman Applicants(新入生の出願締切・出願書類)
- University of South Carolina: South Carolina at a Glance(大学概要・所在地)
- Modern Language Association: 米国高等教育機関における英語以外の言語の履修登録数調査(2021年秋)

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