「海外の大学に進ませたい気持ちはあるけれど、奨学金って本当にもらえるものなのかしら」――お子さまの進路を考えはじめると、こんな疑問が頭をよぎるご家庭も多いのではないでしょうか。学費のことは、進路の話をするときに必ずついて回るテーマですよね。
2026年8月27日、南太平洋の島国サモアの地元メディア Samoa Global News が、5人のサモア人学生が日本の大学・大学院に進学すると報じました。全員が、日本の政府開発援助(ODA)にもとづく奨学金で渡日します。一見すると日本の保護者には遠い話に思えるかもしれませんが、実はこのニュースには「国が奨学金で留学生を受け入れる仕組み」が、とても分かりやすい形で表れているんです。
この記事では、まず今回のニュースの中身を整理します。そのうえで、日本の大学に世界からどんな奨学金ルートで学生が集まっているのか、そして海外在住・駐在中のご家庭がIB(国際バカロレア)を使って日本の大学を目指す場合に、何が使えて何が使えないのかを、順を追って解説していきます。
ニュースの概要
Samoa Global News が2026年8月27日に伝えたところによると、2026年度の奨学生に選ばれたサモアの5人が、日本の大学・大学院で学ぶために送り出されました。5人の内訳は、修士課程が4人、学士課程が1人です。
この奨学金は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する「課題別研修(Knowledge Co-Creation Program、KCCP)」の長期研修にあたるもので、同紙では「SDGsグローバルリーダー」プログラムとして紹介されています。前身は、太平洋島しょ国の人材育成を目的とした Pacific-LEADS(同紙の表記は Pacific Leaders Program)です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報道媒体・報道日 | Samoa Global News(2026年8月27日) |
| 奨学生 | サモアの5人(修士課程4人、学士課程1人) |
| 実施機関 | JICA(国際協力機構) |
| 制度 | 課題別研修(KCCP)の長期研修/SDGsグローバルリーダー |
| 主な進学先 | 立教大学大学院社会デザイン研究科、国際大学大学院(国際関係学研究科・国際経営学研究科)、立命館大学大学院政策科学研究科、立命館アジア太平洋大学(学士課程) |
| 送り出し式 | サモア・サヴァラロのSNPFプラザ内にあるJICAサモア事務所 |
同紙によれば、サモアがこの長期研修制度に参加しはじめたのは2016年で、当初の参加者は4人でした。今回の5人を含めた累計は29人と報じられています。また、1972年から2025年までにKCCPの枠組みで来日したサモアの人は、合わせて1,628人にのぼるとされています。送り出し式には、サモア政府の人事委員会(Public Service Commission)や外務貿易省の関係者も出席したと伝えられています。
ポイント:今回のニュースは「日本の大学が、国の枠組みを通じて世界中から学生を受け入れている」という一例です。奨学金の出し手はJICAであり、学生が個人で日本の大学に留学費用を用意しているわけではありません。
背景と解説
JICAの奨学金は「国づくりの人材」を育てる制度
まず押さえておきたいのは、この奨学金が「成績優秀な若者を広く募る留学奨学金」ではないということです。JICAの長期研修は、日本のODA(政府開発援助)の一部として行われる技術協力で、開発途上国の政府機関などで働く人材が、日本の大学で修士号や博士号を取得し、帰国後に自国の課題解決に生かすことを目的としています。JICAの公式説明でも、長期研修は「1年以上、日本の大学で主として学位課程に就学する」ものと位置づけられています。
つまり、応募のスタート地点が「本人が留学したいから申し込む」ではなく、「相手国政府が推薦する」という点が、私たちがイメージする奨学金とは大きく違うんです。今回のサモアのケースでも、送り出し式に政府機関が関わっていることからその性格がよく分かります。
もうひとつの柱、文部科学省のMEXT奨学金
日本が留学生を受け入れる制度には、もう一つ大きな柱があります。文部科学省の「国費外国人留学生制度(MEXT奨学金)」です。こちらはJICAの制度とはまったく別のもので、日本大使館が推薦する「大使館推薦」と、受け入れ先の大学が推薦する「大学推薦」という二つの応募経路があります。
JASSO(日本学生支援機構)などが運営する公式サイト Study in Japan によると、支給される奨学金の月額は、学部留学生が11万7千円、研究留学生が14万3千円から14万5千円、ヤング・リーダーズ・プログラム(YLP)が24万2千円とされています。加えて、授業料は免除され、往復の航空運賃も支給されるとされています。かなり手厚い制度だと感じられるのではないでしょうか。なお、入学検定料や入学料など授業料以外の費用の扱いは、年度・学生区分ごとの募集要項で確認する必要があります。
英語だけで学位が取れる大学が増えている
今回サモアの学生が進学する立命館アジア太平洋大学や国際大学は、英語で学位を取得できるコースを持つ大学として知られています。日本の大学には、こうした「英語で学位を取得できるプログラム」が数多く設置されており、Study in Japan の公式サイトから条件を絞って検索できます。
ただ、「英語で学位が取れる大学」といっても、全国共通の入試制度があるわけでも、共通の奨学金がセットになっているわけでもありません。設置している大学・学部ごとに、出願要件も学べる内容も奨学金の有無も変わってきます。ひとくくりに考えず、志望校ごとに募集要項を見ていく必要がある、という点は押さえておきたいところです。
保護者への影響と今できる対応
まず押さえたい「使える制度・使えない制度」
ここが一番大事なところなのですが、今回のニュースに登場する制度は、日本のご家庭がそのまま使えるものではありません。
重要:日本国籍のお子さまは、原則として文部科学省の国費外国人留学生制度(MEXT奨学金)の対象にはなりません。JICAの長期研修も、ODA対象国の政府が推薦する人材が対象で、日本の家庭の進学資金制度ではありません。日本人学生の場合は、JASSOの国内向け奨学金、大学独自の給付型奨学金・授業料減免、自治体や民間財団の奨学金を別に検討することになります。
一方で、この二つの制度は性格がまったく違うという点にも注意が必要です。MEXT奨学金は、国籍などの募集要件を満たす外国人であれば、大使館推薦・大学推薦という公表された経路から応募を検討できる制度です。これに対してJICAの長期研修は、対象国や所属先、相手国側の選考・推薦といった条件が前提となるODAの人材育成の枠組みで、誰でも申し込める一般公募型の進学奨学金ではありません。ご家庭の状況によって使える制度がまったく変わってくるので、まずは「わが家はどの立場か」を確認するところから始めていただきたいと思います。
IB資格は日本の大学入学資格として認められている
海外在住・駐在中のご家庭で、お子さまがIBディプロマの取得を目指しているケースもあるでしょう。文部科学省は、国際バカロレア(IBディプロマ)の保有者に日本の大学入学資格を認めています。ただし、ここには大切な区別があります。
- 大学入学資格があること:出願する資格が認められる、という意味です
- 個々の大学の入試に合格すること:これは別の話で、IB資格があれば自動的に入学できるわけではありません
実際の選抜では、IBスコアに加えて小論文や面接などを組み合わせて評価する例があり、求められる要件は大学ごとに異なります。つまり、IB資格を持っていればどの大学にも同じ条件で出願できる、というわけではないんです。志望校が決まったら、その大学がIBをどう扱っているかを個別に確認していくことになります。
今できる準備
- お子さまの国籍・海外在住年数・帰国予定時期を整理する(帰国生入試の要件に直結します)
- 志望校の「IB入試」「帰国生選抜」「英語学位課程」のどれに該当し得るかを、学部・入試方式ごとに確認する
- 募集要項は大学本部ではなく学部・入試方式単位で異なるため、年度ごとの最新版を必ず取り寄せる
- 日本語で学ぶ学部を目指す場合は、IBを英語で取得していても高度な日本語力が求められることを見込んでおく
- 奨学金は、日本人向け(JASSO・大学独自・民間財団)と外国人留学生向け(MEXT等)で入口が別だと理解しておく
ポイント:出願資格は大学単位ではなく「学部・入試方式単位」で決まります。同じ大学でも学部が違えば条件が変わるので、志望校が固まってきたら、必ず該当学部の募集要項そのものを読んでください。
まとめ
- ニュースの中身: Samoa Global News が2026年8月27日、サモアの5人が日本の大学・大学院に進学すると報じました(修士課程4人、学士課程1人)
- 制度の正体: JICAの課題別研修(KCCP)長期研修にあたる「SDGsグローバルリーダー」で、相手国政府の推薦を前提とするODA人材育成の枠組みです
- もう一つの柱: 文部科学省のMEXT国費外国人留学生制度は別制度で、大使館推薦と大学推薦の二つの経路があり、授業料の免除と往復航空運賃の支給を含みます
- 日本のご家庭への注意: 日本国籍を保持したままでは、MEXT奨学金は原則として対象外です。ただし、日本以外に生活拠点を持つ二重国籍者が渡日時までに日本国籍を離脱する予定である場合など、例外規定もあるため、最新の学生区分別募集要項でご確認ください。日本人学生はJASSOや大学独自の奨学金を別途検討することになります
- IBを使う場合: IBディプロマは日本の大学入学資格として認められていますが、合格を保証するものではなく、入試方式ごとの要件確認が欠かせません
出典・参考リンク
- Samoa Global News: Five Samoan Scholars Set to Pursue Higher Education in Japan(2026年8月27日)
- JICA: 本邦研修(課題別研修・長期研修の概要)
- Study in Japan(JASSO): Japanese Government (MEXT) Scholarship
- 文部科学省: 2027年度大使館推薦による国費外国人留学生(学部留学生・高等専門学校留学生・専修学校留学生)の募集について(2026年4月21日)
- 文部科学省: 大学入学資格について
- 文部科学省IB教育推進コンソーシアム: IBを活用した入試
- Study in Japan(JASSO): 英語で学位を取得するプログラム

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