PISA2025で「速く正確に読む力」が低下:読解力OECD1位の結果をどう受け止めるか

日本とOECD平均の読解力の平均得点(2018年・2022年・2025年)を比べた棒グラフ IB最新ニュース

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「PISAで日本の読解力が下がったらしい」「でも、OECDで1位とも聞いたけれど、結局どっちなの?」――ニュースの見出しだけを追っていると、こんなふうに戸惑ってしまいますよね。毎日新聞の英語版も2026年9月23日、「日本の生徒の速く正確に読む力が低下した」という趣旨の記事を掲載しました。

実は、今回の結果は「読解力のOECD加盟国中の順位は2位から1位に上がった一方、平均得点は低下した」という二つの面を持っています。とくに話題になっているのが、短い文を速く正確に読み取る、今回注目されている「読みの流ちょう性」という観点です。

この記事では、文部科学省・国立教育政策研究所の公式資料をもとに、何が下がって何が保たれたのかを整理し、ご家庭でできることを一緒に考えていきます。

ニュースの概要

PISA(ピザ)は、OECD(経済協力開発機構)が15歳の生徒を対象に行う国際的な学習到達度調査です。2025年に実施された「PISA2025」の結果は、2026年9月8日に公表されました。日本では同じ日に、文部科学省と国立教育政策研究所が「PISA2025のポイント」を公表しています。

項目 内容
公表日 2026年9月8日(OECD、文部科学省・国立教育政策研究所)
参加 91か国・地域、約76万人。日本は高校1年生等の183校、約6,500人(2025年6〜8月)
日本の平均得点 科学コンピテンシー538点、読解力503点、数学的リテラシー525点
順位 3分野ともOECD加盟国中1位(調査開始以来初)。全参加国・地域中では科学5位、読解力4位、数学5位

一方で、読解力の平均得点は前回2022年の516点から13点下がり503点となり、この低下は統計的に意味のある差(有意差)とされました。2018年の504点とおおむね同じ水準です。OECD平均も461点と下がっていて、低下は日本だけの現象ではありません。図1にまとめました。

日本とOECD平均の読解力の平均得点(2018年・2022年・2025年)を比べた棒グラフ
図1:読解力の平均得点の推移。文部科学省・国立教育政策研究所「PISA2025のポイント」(2026年9月8日)より作成

毎日新聞は公表日の9月8日にも、日本語版で「PISAで『速く正確に読む力』低下」という見出しの記事を出しています。見出しではSNSの「即いいね」の影響に疑問形で触れていますが、原因が確かめられたという趣旨ではない点に注意したいところです。

背景と解説

「読みの流ちょう性」とは何を測るのか

今回のキーワードが「読みの流ちょう性(速く正確に読む)」です。公式資料に載っている問題例では、短い文が21〜22文、一つずつ画面に出てきて、意味が通るなら「はい」、通らないなら「いいえ」を選びます。たとえば「飛行機は犬でできている。」なら「いいえ」です。つまり、文章を考え込まずにすらすらと、しかも正しく読み取れるかを見る問題ということです。

この設問の正答率が、日本でもOECD平均でも有意に低下しました。文部科学省・国立教育政策研究所は、この低下が読解力の平均得点の低下に「影響している可能性が考えられる」と説明しています。なお、日本の流ちょう性の正答率そのものの数値は、公式の概要資料には示されていません。

下がったところと、保たれたところ

大切なのは、読解力のすべてが下がったわけではないことです。日本では、比較的長い課題文や複数の課題文を読む設問、「情報を探し出す」「理解する」設問の正答率は2022年と同程度でした。OECD平均ではこれらがすべて有意に下がっているので、日本は踏みとどまったともいえます。さらに「評価し、熟考する」設問は、日本では有意に上昇しました(図2)。

PISA2025で日本の読解力のうち下がった項目・保たれた項目・上がった項目の整理
図2:2022年調査と比べた日本の読解力の内訳。文部科学省・国立教育政策研究所「PISA2025のポイント」(2026年9月8日)より作成

気になるのは、得点の低い層です。読解力で習熟度レベル1以下の生徒の割合は13.8%から18.6%に上がり、下位10%の位置の得点も387点から360点に下がりました。一方、上位10%の位置は636点から631点で、有意な変化はありません。「上の層は保たれ、下の層が下がった」という見方ができそうです。

ポイント:順位(OECD加盟国中1位)と得点(13点低下)は別の物差しです。OECD平均も下がっているため、読解力のOECD加盟国中の順位は2位から1位に上がった一方、平均得点は低下した、ということが起こります。ニュースを読むときは「順位」「得点」「中身の内訳」を分けて見ると落ち着いて受け止められます。

原因はまだ断定されていない

読解力の低下について、OECDは単一の原因で説明できるものではなく、複数の要因が重なった結果の可能性を指摘しています。スマートフォンやSNSの影響を挙げる声もありますが、同じ調査で日本の平日のSNS閲覧時間は平均2.3時間と、回答したOECD加盟国24か国の中で最も短いという結果も出ています。SNSだけを原因と決めつけるのは早そうです。

文部科学省の松本洋平大臣は9月11日の記者会見で、次期学習指導要領に向けた検討の中で、国語科で文章の内容を正確に捉える指導やメディアリテラシーの育成などを進める考えを示しました。次回のPISA2029では読解力が中心分野となる予定で、より詳しい分析が可能になるとされています。

保護者への影響と今できる対応

今回の結果は、特定の学校や家庭だけでなく、日本の15歳全体の傾向を示すものです。国際バカロレア(IB)のように、たくさんの文章を読み、考えを書く学びを選んでいるご家庭はもちろん、一般の中学・高校に通うお子さまのご家庭にも関わる話ではないでしょうか。

「速く正確に読む」力は、長い文章を読み解く力や、根拠をもって考えを書く力の土台になります。家庭でできることとしては、次のようなものがあります。

  • 読み飛ばしに気づく声かけ:テストの間違いが「読み違い」から来ていないか、一緒に問題文を読み直してみる
  • 短い文章を毎日読む:新聞のコラムや本の一節など、短くても毎日続けられる量にする
  • 読んだ内容を一言で話してもらう:「何が書いてあった?」と聞くと、正確に読めたかが自然に分かる
  • 学校での様子を話題にする:今日学んだこと、困っていることを話す時間を持つ

最後の項目には理由があります。同じ調査で、保護者が学校のことを話題にするなど「家庭による支援的な関わりの頻度」の指標について、日本はOECD平均を下回り、回答したOECD加盟国37か国中37位でした。ただし文部科学省は、この設問は一面的な面があり、さらに分析が必要だとしています。

注意:PISAは国全体の傾向を見る標本調査で、一人ひとりの力を測るものではありません。「うちの子も読む力が落ちているのでは」と焦るよりも、日々の読み方を一緒に見守ることから始めてみてください。家庭の関わりの順位も、保護者を責めるための数字ではなく、話題づくりのきっかけとして受け止めるのがよさそうです。

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まとめ

  • 順位は1位、得点は低下:日本は3分野ともOECD加盟国中1位でしたが、読解力の平均得点は516点から503点へ13点下がりました
  • 下がったのは「速く正確に読む」設問:読みの流ちょう性の正答率が有意に低下し、得点低下に影響した可能性があるとされています
  • 保たれた力もある:長い文章や複数の文章を読む設問は同程度、「評価し、熟考する」設問は上昇しました
  • 下位層の増加が課題:レベル1以下の割合は13.8%から18.6%に上がりました
  • 原因は未確定:SNSの影響などが話題ですが、OECDは複数の要因を指摘しており、次回2029年の分析が待たれます

出典・参考リンク

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