【解説】「バカロレアは原点回帰だ」時習館高校長の言葉から考えるIBの理念と学校選び

IB導入を目指す段階から候補校、認定校までの流れと時習館の現在地を示した図 IBプログラム解説

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「国際バカロレア(IB)って、結局は英語教育や海外大学進学のためのものなの?」「わが子の学校選びで、IBをどう見ればいいのか分からない」――そんなふうに感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。IBの名前を聞く機会は増えましたが、その「理念」まで知る機会は意外と少ないですよね。

そんな中、愛知県豊橋市の地域紙・東日新聞に、IB導入を進める愛知県立時習館高等学校の牧野昌子校長へのインタビューが掲載されました。見出しは「バカロレアは原点回帰だ」。IBは新しい挑戦ではなく、学校がもともと大切にしてきた校風の延長線上にある、という言葉が印象的です。

この記事では、インタビューの内容を整理したうえで、IBの「原点」である使命と学習者像をわかりやすく解説し、IB校やIB導入校を検討するご家庭が学校選びで何を見ればよいのかをまとめます。

ニュースの概要

東日新聞は2026年9月28日付の連載「この人に聞く」第17回で、時習館高校の牧野昌子校長(57)を取り上げました。牧野校長はこの春に着任したばかりで、定年までの最後の3年間を過ごす任地として初めて東三河に赴任したと紹介されています。

項目 内容
掲載 東日新聞「この人に聞く」第17回(2026年9月28日付)
話し手 牧野昌子・愛知県立時習館高等学校長
学校の動き 2026年4月に附属中学校を開校し中高一貫校に。IB認定に向けた準備、単位制・二学期制への移行が進んでいると報道
IBの状況(学校公表) 中高ともIB認定校を目指すと公表。附属中はMYPの候補校。高校DPが候補校かは今回確認した資料では不明。認可を保証するものではないと明記

記事によると、時習館高校は生徒が自ら学びの種を見つけて取り組む自由な校風で知られ、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の取り組みや国際交流、総合的な探究の時間などの実績を積んできました。牧野校長はIBの導入について、次のように語っています。

牧野校長の言葉(東日新聞より)
「自由な校風と、たまたま国際バカロレアの学びが一致したというだけ」

また進路指導についても、大学合格実績を最終目標にはしないとし、「大学がゴールではないと思います。自分がどうやって生きていくかということです」と述べたと報じられています。共通テストの点数から機械的に志望校を勧めるのではなく、「どういうことをしたい人になりたいの」という問いから入るそうです。

背景と解説

時習館高校と附属中学校のIB導入

時習館高校は明治26年(1893年)に私立補習学校「時習館」として創立され、その源流は江戸時代の吉田藩の藩校「時習館」(1752年創立)にさかのぼると学校公式サイトで紹介されています。校長挨拶では、令和8年(2026年)度から中高一貫教育の開始と国際バカロレアプログラムの導入を目指すとしたうえで、「認可を保証するものではありません」と注記しています。

愛知県が公表した附属中学校の説明資料では、時習館高等学校・附属中学校で「国際バカロレア(DP・MYP)の導入を目指す」と記載されています。つまり、中学校ではMYP(中等教育プログラム)、高校ではDP(ディプロマプログラム)を目指す計画ということです。附属中学校の学校案内パンフレットには「附属中はMYPの候補校になりました」と書かれています。一方で、高校のDPがどの段階にあるのか、認定の目標時期はいつなのかは、今回確認した公式資料からは読み取れませんでした。

IB導入を目指す段階から候補校、認定校までの流れと時習館の現在地を示した図
図2:「導入を目指す」から「認定校」までの段階と、時習館の現在地。時習館高校「校長挨拶」、附属中学校の学校案内パンフレットより作成

IBは、学校が導入を表明しただけで名乗れるものではありません。候補校として準備や研修を重ね、審査を経てはじめて認定校(IBワールドスクール)になります。この段階を図2にまとめました。「候補校」は認定を約束された状態ではない、という点は押さえておきたいですね。

IBの「原点」とは何か

では、牧野校長の言う「原点」と重なるIBの理念とはどんなものなのでしょうか。国際バカロレア機構(IBO)は1968年にスイス・ジュネーブで設立された団体です。IBO公式サイトに掲げられた使命(ミッション)を要約すると、「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良く、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心・知識・思いやりに富んだ若者を育てる」というものです。

さらに英語の原文には、違いをもつ他の人々もまた正しくあり得ると理解できる、生涯学び続ける人を育てる、という趣旨の一文もあります。時習館の附属中パンフレットも、IBの説明として「自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認める」育成を挙げています。

IBの使命の要旨と、学習者像10項目を並べた図
図1:IBの使命(要旨)と学習者像の10項目。IBO公式サイト「Our mission」「The IB learner profile」(日本語版)より作成

この理念を「どんな人に育ってほしいか」という形で示したのが「IBの学習者像(ラーナープロファイル)」です。探究する人、知識のある人、考える人、コミュニケーションができる人、信念をもつ人、心を開く人、思いやりのある人、挑戦する人、バランスのとれた人、振り返りができる人の10項目で、図1にまとめました。テストの点数ではなく「人としてのあり方」を目標に置いているのが、IBらしさなんです。

牧野校長が語った「大学がゴールではない」「答えの出ない事態に耐え続ける力が必要」という考え方は、こうした学習者像とも響き合うように読めます。IBを「英語の資格」や「海外大学へのパスポート」としてだけ捉えると見落としがちな部分ではないでしょうか。

国内のIB校はどのくらいあるのか

文部科学省のIB教育推進コンソーシアムによると、国内の国際バカロレア認定校等は、2026年6月30日時点で273校です。これは認定校と候補校をプログラム単位で数えた数で、内訳はPYPが認定91校・候補36校、MYPが認定48校・候補10校、DPが認定80校・候補6校、CPが認定1校・候補1校となっています(図3)。世界では163の国と地域に約6,200校(2026年6月時点)とされています。

国内のIB認定校と候補校の数をプログラム別に示した棒グラフ
図3:国内のIB認定校・候補校(プログラム単位、2026年6月30日時点)。文部科学省 IB教育推進コンソーシアムより作成

公立校でもIB導入の動きが広がり、選択肢は確実に増えています。だからこそ「IB校かどうか」だけでなく、「その学校がIBをどう位置づけているか」を見る視点が大切になってきているんです。

保護者への影響と今できる対応

今回のインタビューは特定の制度変更を発表したものではありませんが、IB校・IB導入校を検討するご家庭にとって、学校選びの「ものさし」を考えるヒントが詰まっています。東三河エリアで時習館附属中や時習館高校を視野に入れているご家庭はもちろん、海外駐在から帰国後の進学先としてIB校を探しているご家庭にも参考になるはずです。

学校選びで確認したいポイント

  • IBの段階: 「導入を目指す」「候補校」「認定校」のどれか。プログラム名(PYP・MYP・DP)ごとに確認する
  • 学校がIBをどう語っているか: 進学実績の手段としてか、学校の教育理念とのつながりとしてか。説明会で校長や先生の言葉に注目する
  • 探究の実績: IB導入前から、探究学習や国際交流などにどう取り組んできたか
  • 進路指導の考え方: 点数だけで志望校を決めるのか、生徒の関心から一緒に考えるのか
  • お子さんとの相性: 自分で問いを立てたり、答えのない課題に向き合ったりすることを楽しめそうか

注意: 時習館の高校DPが候補校の段階にあるか、また中高それぞれの認定時期は、公式資料では確認できませんでした。候補校であっても認定は保証されません。受験を考える場合は、学校公式サイトや説明会で最新の状況を必ず確認してください。

「IB校なら安心」「IBでなければ意味がない」と二択で考える必要はありません。牧野校長が「たまたま一致した」と語ったように、IBの理念と学校がもともと大切にしてきたものがどう重なっているかを見ると、その学校らしさがぐっと見えやすくなります。説明会では「IBを導入して、何が変わり、何が変わらないのか」を質問してみるのもおすすめです。

ポイント: 学習者像の10項目を家庭で眺めて、「うちの子が伸ばしたいのはどれだろう」と話してみると、学校に聞きたいことが具体的になります。

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まとめ

  • インタビューの要点: 東日新聞(2026年9月28日付)で、時習館高校の牧野昌子校長がIBは校風の延長線上にあると語った
  • 時習館の現状: 2026年4月に附属中学校を開校。中高でDP・MYP導入を目指し、附属中はMYP候補校と公表。認定は保証されていない
  • IBの原点: 多様な文化の理解と尊重を通じて平和な世界に貢献する若者を育てることが使命で、学習者像10項目がその具体像
  • 国内の状況: 認定校・候補校はプログラム単位で273校(2026年6月30日時点)
  • 学校選びのヒント: 「IBかどうか」だけでなく、学校がIBをどう位置づけ、どんな人を育てたいのかに注目する

出典・参考リンク

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