日本語がペラペラでも高校に落ちる?外国ルーツの子の受験に必要な支援

生活のための言葉と学習言語の違い、学習言語を伸ばす3つの土台(母語の力・自己肯定と居場所・日本語に触れる時間)を整理した図 IB最新ニュース

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「うちの子、日本語の会話はもう日本人の友達と変わらないから、高校受験も大丈夫だよね」――そう思っていたのに、模試の点数がなかなか伸びない。外国にルーツを持つお子さんを育てているご家庭や、海外駐在から帰国して日本の受験を控えるご家庭なら、こんな不安を感じたことがあるのではないでしょうか。

2026年11月3日、東洋経済オンラインに「日本語がペラペラでも高校に落ちた」という印象的な見出しの記事が掲載されました(Yahoo!ファイナンスにも転載)。神戸でネパールにルーツを持つ子どもたちの学びを10年支えてきた教室を取材したもので、会話ができることと、受験で戦える学力があることは別物だという現場の声が紹介されています。

この記事では、報道の内容を整理したうえで、文部科学省の調査や兵庫県の入試制度といった公式情報をもとに、「言葉の力以外に何が必要なのか」を保護者の目線で一緒に考えていきます。

ニュースの概要

記事を書いたのは、アジアをテーマに取材を続けるライターの室橋裕和さんです。舞台は兵庫県神戸市の大開通(だいかいどおり)の一角にある民家。ネパールにルーツを持つ子どもたちが通う私塾「インターナショナル・セワ・ソサエティー」の様子が描かれています。

項目 報道の内容
掲載 東洋経済オンライン(2026年11月3日)、Yahoo!ファイナンスにも転載
教室 インターナショナル・セワ・ソサエティー(神戸市)。毎週土曜の午後(ときに日曜も)に開き、30人ほどが通う
代表 ネパール出身のラマ・ゴレ・プリタムさん。2014年に来日し、2016年からボランティアで運営
指導体制 日本語とネパール語ができる先生3人、日本語の先生3人、英語の先生1人
現状 場所と先生が足りず、30人ほどが「順番待ち」と報じられています

報道によると、プリタムさんは平日、兵庫県立芦屋国際中等教育学校で主にネパールの生徒にネパール語や文化を教え、週末を教室の運営にあてているそうです。教室には、来日して日が浅く日本語がまだ不十分な子もいれば、日本生まれでネパール語の読み書きが苦手な子もいます。

見出しの「高校に落ちた」というのは、この教室で学んだ子の中に、日本生まれで日本語の会話にはまったく問題がないのに、高校に合格できなかった子がいたというエピソードです。記事は、その理由として「学習言語」の壁や、母語・アイデンティティの大切さを挙げています。

背景と解説

「話せる」と「学べる」は別の力

記事の中心にあるのが「学習言語」という考え方です。友達とのおしゃべりや買い物で使う「生活のための言葉」に対して、学習言語とは、ものごとを理解し、考え、説明するための言葉のこと。つまり、教科書を読んで要点をつかんだり、記述問題で自分の考えを論理的に書いたりする力ということです。

記事では、この学習言語は習得に時間がかかると指摘されています。家庭では母語で話す子が多く、日本語に触れる時間は日本人の子どもより少ない。そのぶん語彙や知識も足りなくなりがちだ、というプリタムさんの言葉が紹介されています。

さらに興味深いのが「母語がしっかりしている子は、日本語も上達していく」という指摘です。母語で身に付けた基礎知識や学ぶ力があれば、あとはそれを日本語で表現すればいい、という考え方なんです。

生活のための言葉と学習言語の違い、学習言語を伸ばす3つの土台(母語の力・自己肯定と居場所・日本語に触れる時間)を整理した図
図1:「話せる」と「受験で戦える」の間にあるもの(東洋経済オンライン 2026年11月3日の記事より作成)

図1にまとめたように、記事が挙げる土台は「母語の力」「自分のルーツを肯定できる心の芯と居場所」「日本語に触れる時間」の三つです。中高生になると、二つの文化のあいだで「自分はいったい何者なのか」と悩む子も多いと記事は伝えています。心が揺れたままだと、会話はできても読み書きやテストの点数が伸びにくい、という現場の実感は、多くのご家庭にとって示唆に富むものではないでしょうか。

数字で見る、日本語指導が必要な子どもたち

こうした状況は神戸だけの話ではありません。文部科学省が2026年5月25日に公表した「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和7年度)」によると、2025年5月1日時点で、公立学校で日本語指導が必要な児童生徒は84,759人でした。前回の令和5年度調査の69,123人から増えています。この数字には外国籍の子(73,313人)だけでなく、日本国籍の子(11,446人)も含まれます。

日本語指導が必要な児童生徒数(公立学校)の推移と、高校等卒業後の進学率の比較を示す棒グラフ
図2:日本語指導が必要な児童生徒の数と進路(文部科学省 令和7年度調査より作成)

進路の数字も見ておきましょう。同じ調査(公立のみ、令和6年度末時点)では、日本語指導が必要な中学生等の高校等進学率は91.5%で、全中学生等の98.9%を下回っていました。高校生の大学等進学率は41.2%で、全高校生等の75.0%と大きな差があり、中途退学率は6.4%でした(図2)。なお、ここでの大学等進学率は大学だけでなく専修学校なども含む数字です。

ポイント:日本語指導が必要な子は外国籍の子だけではありません。日本国籍でも、海外生活が長かったり家庭の言語が日本語以外だったりして、学校の勉強に必要な日本語に支援が要る子がいます。帰国生のご家庭にも無関係ではない話なんです。

兵庫県の「特別枠選抜」とその対象

入試の面での配慮として、兵庫県の公立高校には「外国人生徒にかかわる特別枠選抜」があります。兵庫県教育委員会子ども多文化共生センターの案内によると、令和8年度(2026年度)入試では北神戸総合・芦屋(県立芦屋高校。芦屋国際中等教育学校とは別の学校です)・須磨翔風・伊丹北・加古川南・香寺の6校で実施され、募集は各校3名。検査は2026年2月16日に行われ、面接と適性検査(国語・数学・英語)で選抜されました。

兵庫県の外国人生徒にかかわる特別枠選抜の対象・検査内容・実施校6校と出願資格の例
図3:兵庫県「外国人生徒にかかわる特別枠選抜」のしくみ(兵庫県教育委員会子ども多文化共生センター、県立加古川南高校の募集要項より作成)

ただし、県立加古川南高校の令和8年度募集要項を見ると、出願資格には「外国籍であること」「2026年3月31日現在で入国後の在日期間が3年以内であること」などが並んでいます(図3)。つまり、この枠は来日して間もない生徒のための制度ということです。令和8年度は外国籍・入国後の在日期間3年以内などが条件で、判断の基準は出生地ではなく国籍や在日期間などです。この条件を満たさない場合は、利用できる選抜方法を学校や教育委員会に確認する必要があります。また、日常会話ができても学習上の支援が必要な場合があります。一方で、この特別枠の利用には国籍や在日期間などの条件がある、という点は分けて考えておきたいですよね。

保護者への影響と今できる対応

今回のニュースが教えてくれるのは、「日本語が話せる=受験の準備ができている」ではない、ということです。外国にルーツを持つお子さんのご家庭はもちろん、海外駐在から帰国して日本の高校を受けるご家庭、家庭内で複数の言語を使っているご家庭にも当てはまる部分があると思います。

注意:特別枠選抜の実施校・定員・出願資格は年度ごとに決まります。2027年度入試(令和9年度選抜)の詳しい条件は、兵庫県教育委員会や各高校の最新の募集要項で必ず確認してください。ほかの都道府県にも外国人生徒向けの入試制度がある場合がありますが、条件は自治体ごとに異なります。

記事の指摘と公式情報をふまえて、確認しておきたいことをまとめました。

  • 教科の言葉でつまずいていないか:会話ではなく、教科書の音読や記述問題の答え方を一緒に見てみる。「割合」「要因」「比較する」など、教科特有の言葉の意味を説明できるか確かめる
  • 母語の学びを続ける:記事が伝えるように、母語の土台は日本語の上達にもつながるとされています。家庭の言葉で本を読んだり話し合ったりする時間を大切に
  • 入試制度を早めに調べる:住んでいる都道府県に特別な選抜や配慮があるか、対象条件(国籍・在日年数など)を中学1・2年のうちに確認する
  • 相談先を見つけておく:学校の担任や日本語指導の担当の先生、地域の日本語教室や支援団体に、早めに進路の相談をする
  • 説明会やガイダンスに参加する:兵庫県では2026年度、神戸・加古川・西宮・姫路の4会場で「外国人児童生徒等に関する就学支援ガイダンス」が開かれ、案内リーフレットには多言語版も用意されていました

そしてもう一つ大切なのが、お子さんの「居場所」です。プリタムさんは「子供たちの居場所をつくりたいと、ずっと思っていた」と語っています。学校でも家庭でもない、自分のルーツを安心して出せる場所があることが、学ぶ意欲の支えになる。勉強の手当てと同じくらい、心の手当ても意識してあげたいですね。

ポイント:記事によると、セワ・ソサエティーで下地をつくってから中等教育学校に進んだ生徒は、学校でも成績が伸びていく傾向にあるそうです。早めに学習言語と母語の両方に手をかけることが、受験の時期になって効いてくると考えられます。

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まとめ

  • 会話力と学習言語は別物: 日本生まれで会話に問題がなくても高校に合格できなかった子がいたと報じられています。受験には、考えて説明するための「学習言語」が必要です
  • 母語とアイデンティティが土台: 母語で身に付けた知識や、ルーツを肯定できる心の芯が日本語の伸びを支えるという現場の声が紹介されました
  • 日本語指導が必要な子は増加: 文部科学省の令和7年度調査で、公立学校の日本語指導が必要な児童生徒は84,759人。高校生の大学等進学率は41.2%で、全高校生等の75.0%と差があります(令和6年度末時点)
  • 特別枠は来日間もない子が対象: 兵庫県の特別枠選抜(令和8年度は6校・各3名)は外国籍・在日期間3年以内などが条件です。満たさない場合は、利用できる選抜方法を学校や教育委員会に確認する必要があります
  • 早めの情報収集と相談を: 入試制度の条件確認、学校や地域の支援団体への相談、ガイダンスへの参加を中学の早い段階から

出典・参考リンク

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