生成AIが答えを出す時代になぜ「探究」?IBの学びとの共通点を保護者向けに解説

探究の4つの過程と生成AIの使いどころ IBプログラム解説

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「宿題もレポートも、AIに聞けばすぐに答えが出てしまう」。お子さまのそんな様子を見て、これから何を学ばせればいいのか気になっている保護者の方も多いのではないでしょうか。

そんななか、2026年10月6日、教育業界向けニュースサイト「ReseEd(リシード)」に、「生成AIが『答え』を出す時代、なぜ探究が重要なのか」という寄稿が掲載されました(ニュース配信(RSS)上の媒体表記は「リセマム」ですが、実際の掲載サイトはリセマムと同じドメイン(reseed.resemom.jp)にあるReseEdです)。高校で英語を教えてきた先生が、AIが整った答えを出せる時代だからこそ、自分で問いを立てて確かめる「探究」が大切になると論じたものです。

この記事では、寄稿の要点をご紹介したうえで、国の制度としての「探究」、そしてIB(国際バカロレア)の学びとの共通点を整理します。なお、寄稿そのものはIBには触れていません。IBとの比較は、この記事の解説として分けてお話ししますね。

ニュースの概要

今回の寄稿は、ReseEdの連載「AI時代の教育」の1本として、2026年10月6日に公開されました。記事の著者紹介によると、執筆者の林直宏氏は高校の非常勤講師で、公立高校の英語科教諭として18年間勤務した経歴を持ち、令和4年度(2022年度)の文部科学大臣優秀教職員表彰を受けています。学校や省庁の「発表」ではなく、現場の先生による意見記事(寄稿)という位置づけです。

項目 内容
掲載媒体 ReseEd(リシード)連載「AI時代の教育」
公開日 2026年10月6日
執筆者 林直宏氏(著者紹介によると、高校非常勤講師・元公立高校英語科教諭)
記事の種類 寄稿(筆者個人の考え)

寄稿の主な主張は、次のとおりです。

  • 探究とは: 生徒が自ら課題を見つけ、問いを立て、仮説を考え、調べて確かめ、結果をまとめて他者に伝える学び。あらかじめ一つの正解が用意されていない問いに、自分なりの道筋をつくることに意味がある
  • AI時代に必要な判断: AIが文章や結論をすぐに示せるほど、「何を問題と考えるか」「どの案を選ぶか」「実際に行動するか」を人が判断する必要が高まる
  • 一次情報の価値: 現地で見たこと、地域の人から聞いた話、自分たちのアンケートや実験で得たデータは、AIの一般的な回答とは別の課題や問いに気づかせてくれる
  • AIは「壁打ち相手」に: AIを「答えをもらう相手」ではなく、仮説の弱点や別の見方を尋ねる相手として使う。たとえば、異なる視点から問いを10個挙げてもらう使い方

また寄稿では、基礎知識が不要になるわけではなく、AIの回答を吟味したり、自分の問いを深めたりするためにこそ知識が必要だ、とも述べられています。「AIがあるから勉強しなくていい」という話ではない、という点は押さえておきたいですね。

背景と解説

学校の「探究」は国の制度でもある

「探究」という言葉は、いまや学校の時間割にも入っています。2018年(平成30年)に告示された高等学校学習指導要領では「総合的な探究の時間」が設けられ、2022年度から年次進行で実施されています。小学校・中学校では「総合的な学習の時間」という名前で、同じく探究的な学習が行われています。

文部科学省の学習指導要領解説では、探究の過程を「課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現」の4つに整理しています。一度で終わる手順ではなく、繰り返しながら深めていくものとされています。寄稿の内容をこの4つの過程に重ねて、図1にまとめました。

探究の4つの過程と生成AIの使いどころ
図1:探究の4つの過程と、寄稿が提案する生成AIの使い方(文部科学省「総合的な学習(探究)の時間」、ReseEd 2026年10月6日の寄稿より作成)

図の下段は、あくまで一人の筆者の提案です。つまり、AIに「答え」を出させて終わりにするのではなく、問いを広げたり、自分の考えの弱いところを見つけたりする道具として使い、確かめる作業は自分の足と目で行う、ということです。

文部科学省の生成AIガイドライン

学校での生成AIの使い方については、文部科学省が「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」を出しています。文部科学省は2024年12月26日にVer.2.0を公表しました。本記事ではこの版を参照します。人間中心の利活用と、生成AIの存在を前提にした情報活用能力の育成を基本的な考え方としています。仕組みや限界を理解して出力の真偽を確かめ、自分で判断する力を育てることも示されています。

ポイント:国のガイドラインも、寄稿も、「AIを使うかどうか」より「AIの答えをうのみにせず、自分で確かめて判断できるか」を重視している点で共通しています。

IBの学びとの共通点(本記事の解説)

ここからは、寄稿にはない、この記事としての整理です。IB(国際バカロレア)では、学習者像として10の人物像を掲げていて、その最初に挙げられているのが「探究する人(Inquirers)」です。ほかにも「考える人(Thinkers)」「振り返りができる人(Reflective)」などが並びます。寄稿が強調する「問いを立てる」「吟味する」「振り返る」力と重なる部分が多いんです。

さらにIBには、各プログラムの節目に「探究や振り返りを深める学び・課題」があります。PYP(初等教育プログラム)の最終学年に行うエキシビション、MYP(中等教育プログラム)の最終学年のパーソナルプロジェクト、DP(ディプロマプログラム)のTOK(知の理論)、EE(課題論文)、CASです。図2にまとめました。

IBの各プログラムにある探究の集大成
図2:IBのPYP・MYP・DPにある探究の課題と、AIに関するIBの声明(国際バカロレア機構公式サイトより作成)

IBO(国際バカロレア機構)の公式サイトによると、TOKは「私たちは何を根拠に知っていると言えるのか」を問う科目で、展示と1,600語のエッセイで評価されます。なお、エッセイは生徒が自由に問いを立てるのではなく、IBが指定する課題から選んで取り組みます。EEは関心のあるテーマを自分で研究し、4,000語以内の論文にまとめるものです。CASは創造性・活動・奉仕の経験と振り返りで、評点はつきませんが、ディプロマを得るための要件になっています。

AIについては、IBOが2023年3月に声明を出しています(ページは2026年2月に更新)。AIツールの使用は禁止しない一方、AIが作った文章や画像は生徒自身の成果とはみなさず、使った場合は本文中で明示し、参考文献にも記載するよう求めています。つまり、「使ってもいいけれど、自分の考えと区別して正直に示す」ということです。

保護者への影響と今できる対応

IB校に通っているご家庭はもちろん、公立校のご家庭にとっても、この話は他人事ではありません。小学校から高校まで、探究の時間はすでにあり、レポートや発表でAIを使う場面も増えていくとみられます。

ご家庭でAIを使う前に確かめたいことを、文部科学省のガイドラインの考え方をもとに図3にまとめました。

家庭で生成AIを使う前に確かめたい4つのこと
図3:家庭で生成AIを使う前に確かめたいこと(文部科学省「生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」より作成)

注意:文部科学省のガイドラインは、すべてのサービスに共通する一律の年齢基準を定めていません。年齢制限や保護者の同意が必要かどうかは、各サービスの最新の利用規約で確認してください。また、学校ごとにAIの利用ルールがある場合は、そちらが優先です。

そのうえで、家庭でできる「探究の後押し」として、次のようなことが考えられます。

  • 「なんでだろう?」を拾う: ニュースや買い物、旅行先で子どもが口にした疑問を、すぐに答えを出さずに一緒に掘り下げてみる
  • AIの答えを一緒に確かめる: AIが出した答えを、本や公式サイト、実際に見たことと照らし合わせる習慣をつける
  • 使ったら書く: 宿題やレポートでAIを使ったら、どこで使ったかを書き添える。IBの声明とも文部科学省のガイドラインとも通じる考え方です
  • 学校に聞いてみる: 学校説明会や面談で、探究の時間の進め方やAIの利用ルールを質問してみる

IB校を検討しているご家庭なら、説明会で「エキシビションやパーソナルプロジェクト、EEでAIをどう扱っているか」を聞いてみるのもおすすめです。学校の考え方がよく見えてくるはずですよ。

ポイント:探究で大切なのは、立派な答えより「自分で立てた問い」と「自分で確かめた事実」です。AIに頼りきりになっていないかは、「どうやって確かめたの?」と聞いてみると見えてきます。

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まとめ

  • 寄稿の主張: 2026年10月6日のReseEdの寄稿は、AIが答えを出せる時代だからこそ、問いを立てて一次情報で確かめる探究が大切だと論じています
  • 国の制度: 高校の「総合的な探究の時間」は2022年度から年次進行で実施。探究の過程は「課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現」です
  • IBとの共通点: IBは学習者像の最初に「探究する人」を掲げ、エキシビション、パーソナルプロジェクト、EEなどで自分の問いを形にし、TOKでは知識のあり方を問い直します(TOKのエッセイはIBの指定課題から選択)(寄稿ではなく本記事の整理)
  • AIの扱い: IBはAIの使用を禁止せず、使ったら明示するよう求めています。文部科学省のガイドラインも、出力をうのみにせず確かめる力を重視しています
  • 家庭でできること: 利用規約の確認、AIの答えを一緒に確かめる習慣、使ったら書き添えるルールづくりから始めてみましょう

出典・参考リンク

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