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「国立大学なら学費は抑えられるはず」と考えて、志望校選びをしているご家庭も多いのではないでしょうか。ところが最近は、国の標準額より高い授業料を設定する国立大学が増えています。その先駆けのひとつが、留学支援などを理由に授業料を改定した千葉大学です。
2026年10月29日、東洋経済オンラインが、千葉大学の「全員留学」と授業料の関係を取り上げ、修士課程の大学院生が留学に行く余裕がないと感じている実情を報じました。授業料の改定そのものは2020年4月以降の入学者が対象で、今回あらたに決まったものではありません。この記事では、授業料と留学費用が家計にどう響くのかを、大学の公式資料をもとに整理しますね。
ニュースの概要
報じたのは、東洋経済オンラインの連載「理想と現実 大学院生の苦悩」の記事です(東洋経済オンライン)。千葉大学の修士課程1年のAさん(匿名)と、千葉大学の小澤弘明理事・副学長への取材で構成されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報道 | 東洋経済オンライン(2026年10月29日、筆者:田中圭太郎氏) |
| 授業料の改定 | 2019年6月7日に千葉大学が発表。2020年4月以降の入学者から年額642,960円 |
| 対象 | 学部、修士・博士前期・専門職学位課程(専門法務研究科を除く)、博士後期課程 |
| 大学院生の声 | 研究と就職活動が重なり、修士課程での留学は難しい |
| 大学側の説明 | 学部4年次の最後の春休みを修士課程の留学に充てる運用や、オンライン留学などの選択肢がある |
千葉大学の2019年6月7日付の文書では、学部・修士課程などは535,800円から、博士後期課程は520,800円から、それぞれ年額642,960円に改定すると書かれています(千葉大学の公式文書)。理由は、全員留学などを柱にした人材育成プラン「ENGINE」の財源を確保するためと説明されています。
記事によると、値上げ後の2020年度以降に学部に入学したAさんは、学部時代に10日間の留学プログラムに参加し、大学から合計10万円の支援を受けて「留学できてよかった」と感じたそうです。一方で修士課程に進んでからは、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を月約8万円借りて授業料を払っていて、2年間で約200万円の借金になると語っています(東洋経済オンライン)。
背景と解説
国立大学の授業料は「標準額の120%まで」
国立大学の授業料は、国が省令で決める「標準額」が基準です。文部科学省の資料では、令和7年度(2025年度)の標準額は学部・大学院(法科大学院を除く)で年額535,800円で、各大学は標準額の120%を上限に授業料を決められると説明されています。つまり、642,960円は「上限いっぱいまで上げた額」ということです。同じ資料では、令和7年6月時点で標準額を上回る授業料を設定している大学は7大学とされています(文部科学省 参考資料集)。
図1に、千葉大学の授業料と国の標準額をまとめました。

千葉大学の「全員留学」とは
千葉大学は2020年度にENGINEを始め、その柱のひとつとして全員留学を実施しています。大学の海外留学情報では、学部生だけでなく大学院生も全員留学の対象とし、卒業・修了までに一度は留学を経験することを掲げています(千葉大学 海外留学情報)。ただし、ENGINEの公式ページの書き方は、2020年度以降の入学者は「多くの学部・研究科等において」留学が必要というもので、すべての学部・研究科で一律に必要とまでは書かれていません。そのうえで、学部生は単位修得(2単位以上)を伴う留学が必要とされています(千葉大学 ENGINE)。自分の学部・研究科が対象かどうかは、入学年度の要項で確かめておくと安心です。
留学の形は、夏休みや春休みの2〜4週間程度の短期留学から、1学期〜1学年間の長期交換留学、オンライン留学まで幅があります。また、ENGINEは2026年度から第2フェーズ「ENGINE 2.0」に移っています(千葉大学 ENGINE公式サイト)。
なぜ大学院生は留学しにくいのか
Aさんは、修士1年の5〜6月に企業説明会が始まり、夏からインターンが続くと説明し、「研究だけでも忙しいのに、就職活動も重なるので、普通に考えたら留学は無理ですよ」と話しています。小澤理事も、全員留学がいちばん難しいのは修士課程だと認めたうえで、学部4年次の春休みを修士課程の留学に使える運用や、オンライン留学などから選べるようにしていると説明したと報じられています。記事では、2025年度に海外渡航した学生は2,978人で、国際学会などを含めて約9割が30日未満だったとも伝えています(東洋経済オンライン)。
ほかの国立大学でも授業料の見直しが続く
熊本大学は2027年度の授業料から、学部・大学院を年額535,800円から594,600円に改定し、在学生も含めて全学年一斉に実施すると発表しています(熊本大学)。お茶の水女子大学は2026年10月27日、2027年4月以降の学部入学者と2028年4月以降の博士前期課程入学者の授業料を642,960円にすると発表しました(お茶の水女子大学)。岡山大学も2026年6月25日に、2027年度入学生からの授業料の方針を公表しています(岡山大学)。
国の動きとしては、財務省が2026年10月22日の財政制度等審議会の分科会で、授業料の標準額を物価・賃金に合わせて毎年度見直す仕組みを提案したと報じられています。まだ提案の段階で、決まった制度ではありません(ReseEd)。
注意:値上げの対象は大学ごとに違います。千葉大学やお茶の水女子大学は「改定後の入学者から」ですが、熊本大学は在学生も含めた全学年一斉です。志望校の発表は「いつの入学者から」「在学中に変わるか」まで確認しておきましょう。
保護者への影響と今できる対応
授業料の差は在学年数で積み上がる
千葉大学の授業料(2020年4月以降の入学者)は、標準額より年107,160円高い設定です。在学中ずっと同じ額だったと仮定して単純計算すると、学部4年間で2,571,840円、標準額との差は428,640円です。学部から修士まで6年間通うと3,857,760円になり、差はちょうど1年分の授業料と同じ642,960円になります。理系では大学院に進む学生が多いと記事でも紹介されているので、進学を見込むご家庭は6年間で考えておくと安心ですよね。
留学費用は授業料とは別にかかる
千葉大学の海外留学情報(2026年10月29日確認)では、短期留学の目安として、欧米で約3週間50万〜70万円程度、アジアで約2週間30万円程度(授業料・滞在費・航空券代を含む)と案内しています。長期の交換留学は授業料を千葉大学に払い、留学先では払いませんが、生活費は1学年間で80万〜300万円程度と言われるとしています(千葉大学 海外留学情報)。
支援としては、2020年度以降の入学者の初回の留学に、渡航費(上限5万円)と留学プログラム受講料の一部を大学が支援する「ENGINEサポート」があります。受講料の支援額はプログラムによって異なります(千葉大学 留学のための経済的支援)。大学院生向けのページでは、渡航費・受講料それぞれ上限5万円と案内されています(千葉大学 大学院生の留学)。JASSOの海外留学支援制度(協定派遣)は、採択されたプログラムで要件を満たす学生に、2026年10月時点の案内で月額8万〜12万円を給付します(JASSO)。図2にまとめました。

ポイント:欧米の短期留学は、支援を受けても数十万円の自己負担になる可能性があります。オンライン留学やアジアのプログラムなど、費用を抑えられる選択肢もあるので、入学前から「どの時期に、どの形で行くか」を親子で話しておくと計画が立てやすくなりますね。
授業料の減免制度も確認を
国の高等教育の修学支援新制度では、令和7年度(2025年度)から、扶養する子どもが3人以上の多子世帯の学生に、所得制限なく国が定める一定額まで授業料などを減免しています(文部科学省)。千葉大学の2024年度前期の減免要項(学部生・日本人学生用)では、修学支援新制度の対象となる学部生について、支援区分に応じた国の減免(年額535,800円が基準)に加え、642,960円との差額を千葉大学の財源で追加免除すると書かれていました(千葉大学 2024年度前期 授業料減免要項)。2025年度以降の扱いは、最新の要項で確かめてください。
志望校を比べるときは、次の点をチェックしておきましょう。
- 志望校の授業料が「いつの入学者から」いくらか、在学中に変わる可能性があるか
- 留学が卒業要件かどうか、オンライン留学など費用を抑えた方法が認められるか
- 大学独自の留学支援と、JASSOなど学外の奨学金の条件
- 大学院まで進む場合、修士課程の授業料と留学の扱い
- 国の修学支援新制度や大学独自の授業料減免の対象になるか
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まとめ
- 授業料の改定は2020年度から: 千葉大学は2020年4月以降の入学者の授業料を年額642,960円にしています。今回の報道は、その運用の実情を取り上げたものです
- 差は在学年数で積み上がる: 標準額との差は学部4年で428,640円、修士まで6年で642,960円です(単純計算)
- 留学費用は別にかかる: 短期でも30万〜70万円程度が目安で、ENGINEサポートやJASSOの給付と組み合わせて考えます
- 大学院生の課題: 研究と就職活動が重なる修士課程では留学が難しいという声があり、大学は学部4年次の活用やオンライン留学を示しています
- 他大学の動きも確認を: 熊本大学やお茶の水女子大学などが改定を決めていて、対象の決め方は大学ごとに違います
出典・参考リンク
- 東洋経済オンライン: 千葉大学”全員留学”を条件に《授業料を値上げ》、その一方で「留学に行く余裕なんてない」大学院生からの切実な声(2026年10月29日)
- 千葉大学: 2020年度以降に入学を希望される皆様及び保護者の皆様(2019年6月7日)
- 千葉大学 海外留学情報: 千葉大学の全員留学(2026年10月29日確認)
- 千葉大学 海外留学情報: 留学のための経済的支援(2026年10月29日確認)
- 千葉大学 海外留学情報: 大学院生の留学(2026年10月29日確認)
- 千葉大学: グローバル人材育成ENGINE(2026年10月29日確認)
- 千葉大学: ENGINE公式サイト(2026年10月29日確認)
- 千葉大学: 2024年度前期 授業料減免要項(学部生・日本人学生用)
- 文部科学省: 参考資料集(2025年9月)
- 文部科学省: 高等教育の修学支援新制度(2026年10月29日確認)
- 日本学生支援機構: 海外留学支援制度(協定派遣)(2026年10月29日確認)
- 熊本大学: 熊本大学における授業料の改定について(2026年10月29日確認)
- お茶の水女子大学: 2027年度以降入学者の授業料改定について(2026年10月27日)
- 岡山大学: 「2027年度入学生からの授業料適正化」の方針について(2026年6月25日)
- ReseEd: 国立大授業料の標準額、物価・賃金に応じ毎年度見直し提案…財務省(2026年10月23日)


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